【インタビュー】NVIDIAの自動運転プラットフォームが目指すもの...オートモーティブ事業キーマン、ダニー・シャピーロ氏に聞く

レスポンスでは「GTC Japan 2016」開催中にNVIDIAのオートモーティブ事業部シニアディレクターを務めるダニー・シャピーロ氏に単独インタビューを行い、実用化に向け加速する同社の自動運転プラットフォーム戦略について話を聞いた。

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ダニー・シャピーロ氏(オートモーティブ事業部シニアディレクター)
  • ダニー・シャピーロ氏(オートモーティブ事業部シニアディレクター)
  • NVIDIA DRIVE PX for AutoCruise
  • ジェンスン・ファン氏(NVIDIA共同創設者、社長兼CEO)
  • NVIDIA DRIVE PX
  • DRIVE PX illustration
  • DRIVE PX 2 Autocruise product render
  • ダニー・シャピーロ氏(オートモーティブ事業部シニアディレクター)
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◆NVIDIAの「BB8」から見えた普及への課題

----:ジェンスン氏の基調講演では、実証試験用車の「BB8」が非常に興味深かったです。これまで学習にAIを活用していくというのはありましたが、答えをAIが出して走らせるという、2つのAIを作用させるのには驚かされました。そのBB8のコンセプトについて教えてください。

シャピーロ:BB8は、まだ研究開発段階の試作車です。大量生産に移して世にあふれ出るいろんな問題を解決するものではありません。なぜBB8を開発したかについては、AIを、特にディープニューラルネットワークを様々な形で自動車の運転に役立てることができるということを皆さんにお見せしたかったというのがコンセプトです。ディープラーニングを使ったニューラルネットワークは非常にパワフルな存在で、例えばiPhoneのSiriのように音声認識に合わせてパーソナルアシスタンス的な役割を担うこともできますし、実は医学の世界でがん細胞を発見するための機能を果たしてもいます。

自動車の世界であれば、歩行車を正確に見分けるといったこともできます。計算能力がここまで進化したことによってそういったことができ、データを認識することによってその中にパターンを見出すのです。それが音声、センサーでとってきたデータ、あるいはX線写真でも、そういったすべてのデータを社内で様々なニューラルネットワークを使いわけ、あらゆるデータを取り込み、様々な分析方法を通し、それを再統合することによって信頼性の高いテクノロジーを築き上げることができます。

学習の過程が分かるBB8の実験動画

BB8の学習にあたっては様々な要素を学ばせています。交通標識や歩行者がどういったものかを学ばせることはできますが、私どもがとったアプローチでは、見ているもの全景をピクセルとして捉え、そこで読み取ったデータからハンドルの操作角度を判断します。全景をピクセルで捉えることは漠然としたものになるのではと思われるかもしれませんが、コンピューターであればそれは問題ない部分なのです。それを正確にデータとして捉えることができれば、正確な判断ができるというコンセプトなのです。

実は、BB8自体は周りに他の車がいるとか歩行者や人がいるなんてことをわかっていないのです。周囲の存在すべてを捉えた上で、こちらの方向だと運転しても大丈夫だとという判断をします。それぞれの要素は認識していないものの、自分が行くべき方向が分かるようになっているということです。何がすごいかというと、プログラミングを加えたり修正をしたりすることなく、迂回ルートへの変更も自動で判断できるようになっています。BB8はあくまで研究段階の試作車なので問題はありませんが、実際に商品として消費者のもとに届けるには、様々なニューラルネットワークを組み合わせなければいけません。先ほど言ったのは「OpenroadNet」という仕組みですが、それに加え、「DriveNet」という前を歩行者が横切ったら認識して車を止めるための仕組みなど、そういったものを組み合わせて使っていかないと商業化、商用化は難しいと考えています。

----:ルールを自動運転にプログラムし、そこにAIによる判断を追加するということでしょうか。

シャピーロ:そこも自動車メーカーによってコンセプトは様々ですが、基本的には何らかのルールは設定することにはなります。速度制限といった交通法規を守って走るのはルールですから。日本でも追い越し禁止車線では、基本的には対向側の車線にでて追い越ししてはいけませんが、前の車が止まっていた場合は周りを迂回できるようにしなければなりません。

そこも人間の運転をきちんと再現するために、ルールに対する例外は入れておくことになると思います。人間であればその場で判断して迂回できるのに、自動運転車は前の車が動くまで一日中待っているというような状態にはしたくありません。そういった場合の判断のプログラミングされるものは、安全運転をしている人間のドライバーであればどういった動作をとるか、きちんと安全を確認した上で適切な行動がとれるかといったものになるかと思います。

ダニー・シャピーロ氏

----:例外となるような人々の経験もニューラルネットワークの中で積みかなさなっていくと。

シャピーロ:基本的にはその通りですが、すべての人の運転経験を蓄積してAIに押し込むのではなく、プロフェッショナルなドライバーが運転した動作を積み上げていくのです。何台もの車からデータを収集してクラウドに入れてそのまま処理させるのではなく、人間のデータサイエンティストがニューラルネットワークで学んだデータを適切に検証した上で、出来上がったものを現実世界の車に還元していきます。そのやり方であれば常にアップデートをかけることができますし、さらに機能を向上させていくことが可能でしょう。

《佐藤大介》

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