ホンダの日本本部長を務める寺谷公良執行役員はレスポンスなどとの共同取材に対し、販売台数を追うのではなく、一連の品質問題などで傷ついたブランドの再構築を最優先する考えを示した。
寺谷執行役員は「かつて(国内販売で)100万台という高い目標を掲げて推進してきたが、やはり今の国内のマーケットサイズと今のホンダの状況を冷静にとらえた時に、70万台レベルというのはある意味、非常に実力値ではないかと私は思っている」とした上で、「ブランドが少し傷ついたところをまずしっかり形をつくって、台数の目標を掲げるのはそれから」と述べた。
寺谷執行役員は3月末までホンダカーズ横浜や同東京中央の社長を務め、まさにホンダが100万台の販売目標を掲げていた際に販売の第一線で指揮をとっており、「やはり高い目標を掲げて推進してきた時にいろんな弊害がでた。とくに一番私が問題視したいのは台数をやるために販売で無理をする、わかりやすくいえばすぐ安売りしてしまう。そういうことによってブランドを損なうことが非常に反省点としてあった」という思いがある。
それだけに「今は台数を無理やりつくることを頑張る前に、まずはしっかりホンダというブランドがきちっとしたい」というわけだ。
2016年度のホンダの国内販売計画は、震災により熊本製作所で生産する軽商用車の供給に制約が生じる影響もあって前年度比2.6%減の68万5000台を見込んでいる。数を追わないとはいえ3年連続の前年度割れは、販売会社は厳しさを増すことになる。
しかし寺谷執行役員は「販売会社の経営に関しては、いわゆるサービスなどの基盤収益が今は総経費の中の80%くらいをカバーできる体質ができてきているので、これにもう一段あげることで、新車が売れようが売れまいが販売会社の経営は揺らがない体制を造り上げないといけない」と指摘。
具体的には「ホンダの国内保有台数約1000万台のうち販売会社がお客様の名前と住所を管理しているのは、たった6割の600万台しかない。残りの400万台は定期的なメンテナンスをカー用品店やガソリンスタンドなどでやられているのが実態。やはりこの人たちをしっかりと販売会社でおつきあいできるようにしていくことが非常に重要。ここをしっかりやれば基盤収益経費カバー率をもっと上げられると私は思っている。ホンダは他社に比べてもまだまだ新車販売に頼っており、基盤収益にこそ伸びシロがある」とした。