日産自動車は6月14日、バイオエタノールから発電した電気で走行する新燃料電池システム「e-Bio Fuel-Cell」の技術を発表した。
e-Bio Fuel-Cellは、バイオエタノール(100%エタノールまたはエタノール混合水)から固体酸化物形燃料電池(SOFC)で発電した電力を車載バッテリーへ供給し、モーターで駆動する仕組み。今回が自動車の動力源として世界で初めて車両に搭載する試みとなる。SOFCは高い発電効率が特徴で、600km以上というガソリン車並みの航続距離を実現するほか、電動駆動ならではの静粛性やリニアな発進、加速など、電気自動車(EV)と同等のパフォーマンスを発揮する。
SOFCは、エタノールのほかにも天然ガスなど、酸素と反応する燃料であれば発電が可能なため、燃料の多様性が特徴。特に、さとうきびやとうもろこしなどを原料にしたバイオエタノールは世界の多くの国で実用化され、広く流通している。こうした国々において、バイオエタノールを燃料とするe-Bio Fuel-Cellは、地域のエネルギーと既存インフラの活用が可能だ。走行時に排出されるCO2が、バイオエタノールの原料となるさとうきびの成長過程で吸収するCO2と相殺されることで、大気中のCO2の増加をゼロに近づけることができる「カーボン・ニュートラル・サイクル」が実現する。
e-Bio Fuel CellはEV並みの安価なランニングコストと、インフラへの大きな投資が不要なことから、市場を拡大する可能性を持つ。さらに商用との相性も良く、電動駆動車ならではの静粛性と、ガソリン車並みの短いエネルギー充填時間により、24時間フル稼働させることが可能。また、長時間安定的に発電できるため、冷凍便など幅広い配送に対応した電源供給も可能となり、高い利便性も創出する。