最新技術の導入現場や実証実験の現場に赴き、その性能の詳細を探ってくる本コーナー。今回は、NTTドコモが8日、報道機関向けに東京・渋谷区のNTTドコモ代々木ビルで公開した、コインパーキングの初期投資を大幅に削減できる「docomoスマートパーキングシステム」のデモンストレーションの様子をご紹介していこう。
同システムの注目点としては、これまでなら採算に合わなかったような小規模な土地でも導入可能なため、都心や住宅地の駐車場不足を解消できる可能性を秘めている点となる。
●シンプルな構成で工事期間&コストを大幅に削減
「docomoスマートパーキングシステム」は、車の入出庫を感知する「スマートパーキングセンサー」、通信モジュールを搭載したゲートウェイ、クラウド上の駐車場管理サーバという三つの要素で構成されるシステム。
一般的なコインパーキングで使用されるフラップ板(ロック板)などの代わりに「スマートパーキングセンサー」を設置し、車の入出庫を感知し、ゲートウェイを介してクラウドサーバーへセンサー情報を送信。サーバーは各々の車室の満空情報(入出庫情報)を管理し、ドライバーへリアルタイムで満空情報を提供するという仕組みだ。
ドライバーはスマートフォンアプリで近隣の駐車場を検索し、事前に空車情報の確認や駐車場を予約することができる。利用料金は1分単位で課金され、利用者はアプリ経由で現在の駐車料金の確認が可能。精算はアプリに登録したクレジットカードから自動で精算されるため、出庫時の現金の用意も不要となる。
ドライバーにとって非常に使いやすいシステムだが、駐車場事業者にとってもさまざまなメリットがある。まず最初に大きなメリットとして挙げられるのは、初期投資を従来のコインパーキングに比べ大幅に削減できること。
従来のロック板は電源の配線工事が必要なため、どうしてもそれなりの初期費用が必要となり、工事期間も最大で半年に及ぶケースもあるという。一方、同システムの「スマートパーキングセンサー」はバッテリーで駆動し、最大で5年間バッテリー交換なしで運用が可能。そのため投資回収にかかる期間は従来平均の18ヶ月から6ヶ月まで短縮でき、工期も最短1日で設置することができる。
低コストかつ短期でコインパーキングの開設及び運用が可能なので、従来なら採算が合わなかったような小規模な土地でもコインパーキングとして活用できる。また空き地の一時的な駐車場への利活用や、月極駐車場の空きスペースをコインパーキングとして活用するといったこともこれまで以上に容易になるため、都心や住宅街での慢性的な駐車場不足の解消にもつながる。
●不正利用の監視や窃盗犯罪抑止も実現!
今回のデモンストレーションでは、NTTドコモ代々木ビルの空きスペースを駐車場として設定。「スマートパーキングセンサー」が実際に入出庫を感知する様子や、アプリで空いている駐車場を検索して予約し、入庫・出庫するまでの一連の流れを公開した。6月13日から2017年3月31日まで行われる実証実験を前に、システムがほぼ完成されている様子を確認することができた。
コインパーキングでは不正利用対策も重要な課題となるが、同システムの場合スマートフォンと紐付けたシステムなのでそもそも不正がしにくくなっており、予約していないドライバーが勝手に駐車した場合も管理者側がリアルタイムで把握できるので即座に対処が可能だ。
また、小規模なスペースや空き地の一時的な利活用などに加え、車を使わなくなった高齢者宅の空きガレージを活用するなどの運用も考えているという。人の出入りが生まれることで、防犯対策としての効果も期待できるとのこと。精算機が不要のシステムなので、精算機の現金を狙った窃盗犯のターゲットになる恐れも減らすことができる。
今後の予定として、まずは同システムとプレステージ・インターナショナル及びプレミアモバイルソリューションが運営する保守・運用サービスと組み合わせて、コインパーク及びシェアリングサービスの一部駐車場にて、6月13日から2017年3月31日まで実証実験を行い、センサー及びシステムの実用性や信頼性のより深く検証していく。
●10月からは一般利用者向けに試験運用も開始!
そして2016年10月からは、シェアリングサービスの駐車場予約サービス「トメレタ」のサイト及びアプリから予約をすることで、実際にドライバー向けに同システムを試験的に提供する予定。ドライバー向けのサービス提供実験は場合によっては前倒しになる可能性もあるという。
将来的には、バイクなど二輪用のコインパーキングにおける導入や、近い未来の実用化が期待される自動運転との連動も視野に入れているという。例えばカーシェアリングで使用する車が近くの駐車場からユーザーの元に向かい、利用後は好きな場所で車を降りると、再び自動運転で最寄の駐車場へ向かうといった形が考えられるそうだ。