今回試乗することができたのは、ピレリP-ZEROシリーズのスポーツ性の高いモデル(便宜的にスポーツP-ZEROと呼ぶ)。OEタイヤ(純正装着)が主体になっているため、それぞれのモデルに専用設計されており、一つのタイヤとしてP-ZEROのインプレッションとして書くのは難しい。
大くくりにスポーツP-ZEROを言うなら、ハイグリップ性能とグリップの限界領域での素晴らしいコントロール性を備えた超ハイパフォーマンスタイヤ。乗り心地もゴツゴツした荒っぽいところがない。超ハードスポーツはトロフェオに任せ、スポーツカー、スーパースポーツカー向けにバランスのいいタイヤを目指したということなのだろう。
試乗車として試乗することができたのは、ポルシェ『911』ターボ、ランボルギーニ『ウラカン』、アウディの新型『R8』だった。いずれもタイヤサイズは前245/30R20、後305/30R20で共通。ただし、それぞれ認証タイヤの刻印があり、チューニングが異なっているところが興味深かった。
911ターボは、タイヤのねじれ剛性や横剛性がもっとも強く、クルマを前に前に押し出すトラクションが強い。リヤエンジンのトラクションの良さを生かすセッティングということなのだろう。操縦性はシャープというより素直といった印象でハンドルの操作どおり正確にタイヤが反応してくれる。
ウラカンは、もっともシャープで、鋭さを持った操縦性を持っている。ハンドル操作…特に小舵領域の反応がよく、いってみれば切れ味が良い感じ。粘着系のグリップ感が強くあって、3台の中では最もコンパウンドグリップが高いのではないかと感じた。旋回スピードも速かった。それでいながら滑り出し微小なスライドコントロールは素晴らしく良く、鋭さが不安にならないようチューニングされていた。
R8は、3台の中では最も穏やかというかマイルドな味付け。絶対的なグリップ性能の高さは備えているし、正確度の高い操縦性を見せてくれるが、グリップ性能の高さよりもインフォメーション性の良さと自在のコントロール性に振り分けている。ハンドルに伝わってくる反力の変化でグリップの様子が文字通り手に取るようにわかるのだ。しかも滑り出しがビックリするくらい穏やかで、その様子がわかりやすく、余裕を持ってコントロールできる。R8が狙った圧倒的な乗り易さが、ちゃんと性能になっている。
ピレリは、新型P-ZEROをオーダーメイドといっていたが、まさしくその通りだった。911ターボは高いスタビリティと強烈なトラクション性能を、ウラカンには、スーパースポーツカーらしい切れ味の良さが、そしてR8には抜群のコントロール性が性能として発揮されていた。もちろんこれはタイヤだけでなくクルマのセッティングとも大きく関係している。つまり、オーダーメイドなのだ。
ピレリの開発エンジニアによれば、OEサイズにないタイヤは、タイヤサイズによってそれぞれに最適と思われるチューニングを施すという。それがどんな味付けなのかは、また後日、機会があったらレポートしてみたい。