きれいなボディラインには心がひかれる。それが実用性に富んでいるならなおさらだ。ボリュームの出し方がハンパなく美しい、シューティング・ブレーク。
『CLS』のシューティング・ブレークは、その価格といいサイズといい、どう使いこなせばいいのか見当もつかないまま見とれるばかりだったけれど、『CLA』のサイズになれば話は違ってくる。がんばれば手がとどきそうな実用美。「ワゴン」というカテゴリーに軽々しく入れてはバチが当たる。
試乗車は特別仕様車のオレンジアート・エディションである。随所にハッピーカラーのオレンジがちりばめられ、見ているだけで気分が上がる。もちろん走りも上がりまくりだ。
AMGエンジンのトルクあふれる走りは、スポーツモードにしたときの攻撃的な走りが印象的。AMGのキャラ設定を、忠実に表現している。さらに4WD。同じCLAでも、4ドアクーペでは、硬いと感じたサスペンションも、シューティング・ブレーク、いや、この仕様ともなるとボディの剛性感がうまく全体を受け止めて、奥行きのある硬さになっている。
パワステはその走りを手で感じろと言わんばかりにずしりと重く、ついでに、ハンドルを覆ったDINAMICA素材はグリップ性が高い…はずなのだが、緊張して手の表面温度が下がりぱっさぱさになった手のひらだと、さらさらに感じられて逆にすべる。庶民はクルマのコンセプトについていけなくて戸惑ってしまう。
後部座席は、CLA 4ドアクーペより42mm、頭上の空間を確保したというが、それでも身長170cmの私だとちょっとアタマが窮屈になる。後部座席はオトナの友達を乗せるより、エレガントな空間として使うほうが向いている。とはいえ、カタチで存在価値を語り、特別仕様で個性を語るこのクルマは、ドライバーの保有満足度を、すこぶる刺激するのである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。