国立天文台、ニューヨーク州立大学、都留文科大学の研究者で構成する研究チームは、すばる望遠鏡でラブジョイ彗星(C/2013R1)を詳しく観測した結果、イオンの尾の構造が20分ほどの間に大きく変化していたことを発見した。
地球に近づき、明るく見える彗星は1年に1つあるかないかと数が少ないため、イオンの尾が短時間で急激に変化する様子の観測データは少なく、これまでほとんど解明されていない。
今回の研究では、すばる望遠鏡に搭載された主焦点カメラSuprime-Camを用いて、彗星の核から80万キロメートルほどの範囲のイオンの尾を繰り返し観測し、時間変化を追求した。
観測に使われたIバンド(波長850ナノメートル)では水イオン、Vバンド(波長550ナノメートル)では一酸化炭素イオンと水イオンの発する光を見た。
得られたデータを詳しく調べたところ、ラブジョイ彗星の尾の大局的な構造が、10分間ほどの短時間で変化していたことがわかった。
さらに、イオンの尾の中を詳しく見たところ、核から30万キロメートルほどの位置に塊が生まれ、秒速20-25キロメートルほどの速度で下流に流れていく様子も発見した。イオンの尾は、太陽から流れてくる粒子(太陽風)によって彗星の核付近のイオンが吹き流されて伸びていくもので、尾の中のイオンは、最終的に太陽風の速度(秒速300-700キロメートル)に達して流されていくと考えられている。
今回の観測では、彗星の近くにいたイオンの塊が太陽風によって最初の加速を受けつつある、その動き始めの状態を観測した。
すばる望遠鏡の広い視野と高い集光力によって、この分野で新たな展開が期待されるとしている。
今回の研究成果は、年3月発行の米国の天文学誌「アストロノミカル・ジャーナル」に掲載された。