国立天文台は、鹿児島大学の中川亜紀治氏を中心とした研究チームが、VERAを用いてミラ型変光星「T Lep」の水メーザー観測で、変光星の周期光度関係をより高精度に導くことに成功したと発表した。
VERAは、銀河系の3次元立体地図を作るプロジェクト。VLBIという電波干渉計の手法を使って、銀河系内の電波天体の距離と運動を高精度で計測する。国立天文台を中心に、多くの大学や研究所から、さまざまな分野の研究者が参加している。
ミラ型変光星などの長周期変光星は、太陽の1~8倍の質量を持つ。星の進化の末期に差し掛かっていて質量の放出が激しく、宇宙の化学組成を理解する上で重要な天体となっている。
またこの種の星には、明るさの変化と周期の間に比例関係(周期光度関係)があることが知られており、距離の指標としても有効であることが明らかになっている。
今回、研究チームでは2003年~2006年にかけて、T Lepに対し、VERAを用いて水メーザーのモニター観測を行った。この結果、天体の年周視差は3.06プラス・マイナス0.04mas、地球からの距離が327プラス・マイナス4pc、固有運動は秒速27.63kmと算出した。
また、これらの値を用いることにより、ミラ型変光星の周期光度関係が、MK=マイナス3.51 log P・プラス・1.37プラス・マイナス0.07という計算式で得られることが分かった。
今後、さらに多数のミラ型変光星で距離決定を行うことで、高精度な周期光度関係を確立する。