日本で「ボッシュ」と言えば『自動車部品における世界最大のサプライヤー』として認知されるが、海外では家庭用電化製品をはじめとして展開するグローバル企業だ。その総売上は約461億ユーロ(約6兆5000億円)。その巨大企業の出展から興味深い内容をピックアップした。
ボッシュのCES2015でのスタートは、1月5日午前8時。すべての出展企業に先駆けたプレスカンファレンスだった。早朝にもかかわらず、集まったプレスは260人以上(ボッシュ発表)。会場はほぼ満席状態だった。登壇したのは、ボッシュ取締役会メンバー兼ロバート・ボッシュLLC会長であるヴェルナー・シュトルト氏。ここで、シュトルト氏は、「コネクテッド」が及ぼす影響について言及した。
これを受けてCES2015会場で展開されたのは、「コネクテッド」が成し遂げる近未来の世界だ。会場はそれに基づく「Smart Device」「Home」「Smart Vehicle」のブースにそれぞれ分けられていた。
Smart Dvice で興味深かったのは、「Air Quality」と呼ばれる最新の環境センサーだ。温度、圧力、湿度のすべてを感じ取れるセンサーで、サイズは3×3×0.93mm!この小さなサイズを実現できたことで、スマートフォンなどへの展開を図る。デモでは、センサーの動作状況をわかりやすくするため、壁に飾られた表情でそれを識別できるようにした。
たとえばセンサーに息を吹きかけると、たちまちモナリザの表情が青ざめていく。さらに状態が悪くなると額には冷や汗が出てきた。また、アルコール度のセンシングも可能で、酒入りチョコレートを近づけただけでもモナリザの表情が変わった。担当者によれば、圧力センサーは気圧を感じ取ることもでき、ソフトウェアとの連携が進めばナビ機能の高低差識別にも役立てられるという。
Home で注目だったのは、家庭電化製品を一括管理できるスマートフォン用アプリだ。このアプリを核として、スマートフォンやタブレット端末からコントロールでき、出先から冷蔵庫の中身を確認したり、家電製品から異常動作の通報を受け取ったり、さらに遠隔操作で問題を解消したりする。たとえば、スーパーで見つけたレシピネタからどんな材料が足りないかが即座に把握できるというわけだ。ネットワークでつながる対象はオーブンや食器洗い機、洗濯機にも対象は広がり、すでに欧州マーケットでは一定の評価を得ているところだという。
また、このシステムはオープンプラットフォームとして公開されているのも大きなポイントで、サードパーティを含めたサービスの成長が見込めるのも見逃せない。対応OSは現段階ではiOSのみだが、6か月後にはAndroidにも対応予定だという。
そして最も中身が濃かったのが Smart Vehicle の分野だ。会場の中央には、アウディ『TT』に搭載されたメータークラスターと、BMWに採用されているヘッドアップディズプレイである。
メータークラスターで驚くのはその多彩な表示能力だ。基本となるメーター以外に、ナビ機能、マルチメディア情報のすべてを映し出し、ドライバーの希望や状況にきめ細かくレイアウトして対応する。アウディTT以外にもBMW『i8』で量産化が進み、このようなスタイルはさらに増えていくとする。処理を行うプロセッサーはNVIDIAの「Tegra K1」だが、システムインテグレートしているのがボッシュということになる。
ヘッドアップディスプレイが情報を投影するのは、フロントウィンドウではなく、折りたたみ式のコンバイナーだ。画像は前方2mほどのところに周囲の風景と重ねて合わせて映し出す。このシステムは既に2014年以降のBMWで採用されてきているという。
また、外部とのネットワーク接続に枠割りを果たすのがボッシュ独自のインフォテイメント システム「my SPIN」だ。iOSとAndroid二つのOSに対応しており、ユーザーはUSB端子にスマートフォンを接続するだけで、スマートフォンとの完全リンクを実現する。これにより、車内での利用時に高度な安全性と信頼性を獲得でき、音声入力やリアルタイム交通情報に基づいた走行支援をもたらすナビゲーションにも反映できるという。
会場内には「my SPIN」を搭載したジャガーFタイプを展示し、実際にその高度なインターフェイスを体験することもできた。スマホとの連携では多彩な情報のリンクが行え、それが結果として安全にもつながっていくとの認識を示した。