2014年10月3-5日に開催されたF1日本GPでは、15万人の来場者があった鈴鹿サーキット。「日本のモータースポーツの中心地」といわれるこの地を平日昼間に徘徊。その最寄駅のひとつである伊勢鉄道 鈴鹿サーキット稲生駅まで歩いてみた。
訪れた日は、鈴鹿サーキット公式ホームページのイベントカレンダーに何も記されていない日だったが、のどかな丘陵地帯に建つコースからはかん高いエンジン音が聞こえてきた。観覧席には、練習走行などを見学する幼稚園生や小中学生の姿があった。
F1マシンが駆ける国際レーシングコースの北側には、遊園地「モートピア」がある。首都圏などにあるレジャー施設ほど混雑していないが、子どもたちが園内を駆け回っている。「ホンダの鈴鹿製作所や鈴鹿サーキットの見学と、このモートピアでの自由時間がセットになった遠足が定着している」とスタッフはいう。
ホテルや天然温泉がある遊園地エリアとサーキットエリアの間に「サーキット道路」と呼ばれる市道があるが、歩道を行く人の姿はほとんどない。「地域柄、9割がクルマや観光バスでやって来る」(同スタッフ)という。
また、サーキットからのエンジン音に混じって「はい、姿勢をもとに戻して~、左右を確認して~」といった拡声器の声が聞こえてくる。「みんなの体操」を想像してしまうその美声は、交通教育センターの指導員のもの。この日はホンダ『スーパーカブ』に跨る人たちが、指導員の指示に従ってトレーニング中。自動車教習所とは違い、どこかシュールな雰囲気もある。
さらに南ゲートから1.4km東にある伊勢鉄道 鈴鹿サーキット稲生駅まで、サーキット道路沿いに歩いてみた。片側2車線の車道にはトラックやマイカーなどが走っているが、歩道を行く人は見当たらない。14時過ぎのこの道で、20分ほど歩いた間に、歩行者とはひとりも出会わなかった。
駅までの道の途中で、「売物件」という看板が立つ更地や、真新しい中勢バイパス、路面凍結防止剤箱、炭焼き小屋、みかん畑などを見つけたが、人の姿やコンビニはゼロだった。
20分ほど歩くと、サーキットを走るマシンのエンジン音が遠のき、「鈴鹿サーキット稲生駅」という矢印の看板が見えた。田んぼの向こうに、高架ホームを確認。
2面2線のこの無人駅は、津方面の橋脚に「1966-9」、四日市方面には「1979-2」という刻印がある。1時間に0~2本、1両のディーゼルカーが止まるだけだが、6両編成の列車が停車できるだけの長さのホームを持っている。誰もいないこのホームに立ち、臨時列車の利用客で大混雑するF1開催期を想像していたら、津方から1両の気動車がこちらに駆け寄ってきた。