フロントに1個、リア左右輪に1個ずつの、計3個の電気モーターを装備する電動4輪駆動の新型ホンダ『レジェンド』。この複雑なシステムの最大の目的は、駆動力配分によってクルマのコーナリング能力を上げるという、今日流行しつつある「トルクベクタリング」を実現させるためだ。
昨年秋、本田技術研究所の栃木研究所敷地内にあるハンドリングコースで、このレジェンドのプロトタイプをテストドライブした。トルクベクタリングをどのくらい利かせるかはコンピュータの制御次第でどうにでもなるので、市販モデルと乖離(かいり)している可能性もあるが、少なくともテストコースにおいては、トルクベクタリングの効果は一発で体感できるくらいハッキリとしたものだった。
とくに気持ちよく走れるのは、半径100m台で90度以上回りこむようなコーナー。ステアリングの舵角を一定に保ったままスロットルの踏み込み量を調節することで、運転技量が高くなったような錯覚に陥るくらい、ロールのぐらつきもなく定常旋回のように安定して駆け抜けることができる。また、タイトコーナーでも車両重量2トン弱というマスをものともせず、鼻先がスッとコーナーの奥を向くため、スポーティかつ安心感の高い乗り味であった。
プロトタイプの旋回性能の良さやスムーズさは、この手のアクティブ制御が投入されたクルマのなかでもかなり良いほうに属するように感じられた。リアの左右輪をそれぞれ独立した電気モーターで駆動するためか、機械式のシステムに比べて制御の自在度はかなり高そうだった。
また、トルクベクタリングのようなシステムは、うまくチューニングしないとドライバーがクルマをコントロールしているという実感を持ちづらくなってしまうのだが、プロトタイプの味付けはかなり良好で、至ってナチュラルなフィーリングだった。日本の公道では欧州Eセグメントの大型サルーンの性能が試されるようなシーンはほとんどないが、市販モデルの味付けについても検証してみたいところだ。