【シトロエン C3 セダクション 試乗】おっとりとした挙動は、いにしえのシトロエンそのもの…中村孝仁

試乗記 輸入車

シトロエン・C3 セダクション
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いにしえのシトロエンらしさを走りで体感できる唯一のモデル。それがシトロエン『C3』である。そのおっとりとしたボディの動き、ほかでは味わえないほのかな気持ちにさせてくれる。

シトロエンといえば、かつては独特なハイドロ系のサスペンションを持って、その挙動はならではのものだった。だがそのハイドロ系は今、トップモデルの『C5』にしか設定はなく、通常のスプリングによるサスペンションも、シトロエンならではのセッティングの妙を見出すことは難しくなっている。そんな中、乗ってみてこれはシトロエンだ! と実感できる唯一のモデルがこの『C3』ではないだろうか。

かつてフランス車に共通したクルマの挙動があった。それはダンパーの伸び側の動きが実にゆったりとしたものだということ。このため、凹みなどを通過すると一端沈み込んでからゆっくりと車体が上がっていく。だから、ガツンと衝撃が入力されることはなく、まさにいなすという形容が相応しい非常に快適なものだった。しかし、80年代頃からドイツ車の台頭に呼応して高速性能が求められるようになると、この挙動はレスポンスの遅れとして高速化の妨げとなり、いつしかフランス車特有のこの乗り心地は消えていったのである。しかし近年、不必要な高速化は燃費の悪化を招き、削ぎ落とした性能を快適性に振る開発が僅かずつながら復活している。

C3はまさにその先駆け的なモデルで、安全性能を犠牲にすることなく、ゆったりとした乗り味を実現しているのはうれしい限りである。

ただ、今回主目的として試乗したのはその乗り味ではなく、実はメカニズムの方。現在シトロエン/プジョー連合は、ピュアテックと呼ばれる直列3気筒1.2リットルエンジンと、ETG(エフィシェントトロニックギアボックス)という名のシングルクラッチ電子制御マニュアルの組み合わせを、Cセグメント以下の大半のモデルに使用している。しかしながら、多くのライバルは6速ATや、あるいはツインクラッチの電子制御マニュアルDCTを用いており、淀みない加速感という点においては、どうしてもETGはDCTやATに劣る。というわけで改めてそれを検証するためにおよそ500kmを走破してみた。

その結論から言うと、やはりETGはATやDCTには劣る。どこがどう具体的に劣るかというと、まず加速の際はスムーズなギア間のやり取りができない。そして変速が遅いという点。この変速が遅いという点は、マニュアル操作しても同じことなのだが、ドライバーが自分の意思をもって変速出来るという点で大きく異なる。つまり自動車任せのATモードに入れておくと、意図しないところでシフトアップしたりシフトダウンしたりしてしまうのだ。だから、サスペンション同様おっとりと走るドライバーにとっては大きな痛痒は感じないのかもしれないが、少しでも速く走ろうとしてATモードに入れておくと、イライラするケースが出てくるのである。ただ、C3の場合は他のETG搭載車と比べて、それでもかなりスムーズな変速をしてくれる方だと思う。

一方で、このピュアテックの組み合わせはかなり燃費を稼いでくれる。400kmほど走ったところでまだ燃料計は半分の残量を示していたから、まあ軽く600kmは問題なく走れそう。その気になれば800kmに届くかもしれない長足を持つ。

結論的にETGはやはり、ATモードが付いてますというトランスミッションに過ぎず、常にATで走るつもりのユーザーは、それなりの覚悟をもって乗る方が良い。しかし、初めからATを使わずにパドルシフトを楽しみたいドライバーには、シングルクラッチならではの独特な癖を逆手にとって、運転を楽しむことが出来る。この点はスムーズ過ぎるDCTよりも面白い。そんなわけで、使い方次第で面白くもできるピュアテックだが、ETGについてはAT並を期待するのは無理がある。

ただし、このC3にはその挙動と共に、もう一つ唯一無二の価値がある。それが独自の設計コンセプト、ヴィジオドライブから生まれたゼニスウィンドーという、ほぼドライバーズシートの真上まで広がる広大なフロントウィンドーだ。リアビューミラーはまるで空中に浮遊しているような感覚。オープンカーでもウィンドーフレームが視界に残るが、このクルマにはそれがない。このヴィジオドライブだけ欲しさにC3を買う価値は十分にあると思う。

パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★
フットワーク ★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁|AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来36年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
《中村 孝仁》

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