新型トヨタ『ノア & ヴォクシー ウェルキャブ』は、開発者自らがユーザーの元へ訪問し、インタビューや使用状況を観察した結果を大きく商品に反映させたという。
トヨタ製品企画本部ZU主査の中川茂さんは、具体的な例として、リアのスロープを挙げる。「スロープには筋がたくさん入っている。これは(車いすなどを)押して上がっていくときに足が滑らないようにするためのものだ。しかし、一カ所だけ筋が入っていないところがある」という。
「その理由は、靴の裏に着いた小石がスロープに乗った状態で、スロープ板を畳むと、途中で小石が噛んで動かなくなってしまうことがある。これは、スロープ車の共通の悩み。しかし、この工夫があると、スロープを立てることで、筋の無いところから小石が排出され、噛み込みが防止できるのだ」と話し、この工夫は特許を取得していると中川さん。
また、テールゲートの内側にあった大きな照明を廃止し、別のところに小さな照明を付けた。これは、テールゲートを開けたときに上面から照らすことで作業をしやすくする目的だった。しかし、実際には作業者の背中を照らすことになり、肝心の手元を照らすことが出来ず、その手元が見えるようにランプを別のところに配したのだ。このように、「使っている人たちを観察して、それに合うものを自分で構造を考えて、社内を説得して実現させていったのだ」という。
最後に中川さんは、「一番うれしいのは、これが世の中に出て、ユーザーが喜んでくれた顔を見たときだ。トヨタ自動車は大きい会社なので、細かく分業されているが、福祉車両は組織が小さいので、エンジニアである自分が市場調査も、企画も出来る。開発も行い、実際に会社にプレゼンテーションをして、エンドユーザーのところへ確認にも行ける。このように全部を見ることが出来るので、非常にやりがいのある仕事だ」と語った。