マツダのクルマはこれまでもエンスージァスティックな匂いのする車種が多かったけれど、新型『アクセラ』の1.5リットル6速MT仕様は、『ロードスター』を除けば現時点における頂点だと思った。ここまでヨーロッパの実用車に近い国産車はちょっと珍しいからだ。1.5リットル自然吸気エンジンはスカイアクティブ化された。そのわりに111psの最高出力、14.7kgmの最大トルクは飛び抜けた数字ではない。試乗車の重量は1240kgだったから、アップダウンが連続するルートでは、全開また全開。でもそれ以外の部分では、これまでの1.5リットルとの質の違いがはっきり分かる。上まで回してもこもったりザラついたりせず、スカッと吹け上がってくれるからだ。持てる力をフルに使い切って走ろうという気持ちになれる。そう思わせるいちばんの理由は、シャシーの能力がずば抜けているから。ディーゼルやハイブリッドをカバーするキャパシティを備えたサスペンションに対して、上屋は軽く、力は限られている。だから足が理想の仕事をできる。乗り心地は極上だし、ロードホールディングは底なしかと思うほど。おまけにノーズは軽いし、ステアリングのタッチは自然、シフトフィールは確実そのものだ。スカイアクティブテクノロジーの恩恵でドライビングポジションも文句なし。これはFF5人乗りのマツダ ロードスターではないかと思った。Cセグメントのハッチバックとして水準以上の実用性や快適性を備えたうえで、とにかく爽快なドライビングを味わわせてくれるのだから。ここまで走りに熱中できる国産実用車はひさしぶりだ。しかも価格は200万円以下。これをエントリーカーに選んだ人は幸せだ。■5つ星評価パッケージング:★★★★インテリア/居住性: ★★★★パワーソース: ★★★★★フットワーク: ★★★★★オススメ度: ★★★★★森口将之|モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト1962年東京都生まれ。自動車専門誌の編集部を経て1993年に独立。雑誌、インターネット、ラジオなどで活動。ヨーロッパ車、なかでもフランス車を得意とし、カテゴリーではコンパクトカーや商用車など生活に根づいた車種を好む。趣味の乗り物である旧車の解説や試乗も多く担当する。また自動車以外の交通事情やまちづくりなども精力的に取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員。