鉄道各社の運賃改定方針出そろう…一部は据え置き

鉄道 企業動向
消費税率の引き上げで全ての鉄道・軌道事業者が4月1日に運賃を一斉に値上げするわけではない。四国の阿佐海岸鉄道は現行運賃を据え置く。
  • 消費税率の引き上げで全ての鉄道・軌道事業者が4月1日に運賃を一斉に値上げするわけではない。四国の阿佐海岸鉄道は現行運賃を据え置く。
  • 都営地下鉄と日暮里・舎人ライナーはシステム改修に時間がかかるため6月1日に値上げを実施する。
  • 北神急行電鉄は上限運賃を据え置くが、実施運賃は値上げする。
  • 熊本市電を運営する熊本市交通局は上限運賃の改定を申請し認可済みだが、新たに現行運賃と同額の実施運賃を設定して実質据え置く。
  • 天竜浜名湖鉄道の改定率は今回の消費税率改定を大きく上回る10%台。収支改善を目的とした通常改定分を含んでいる。
  • 関東以外でICカード1円単位運賃を導入する事業者は少ない。写真はICカード1円単位運賃を導入する仙台空港鉄道。
  • JR旅客6社と大手私鉄16社の認可状況。ICカードによる1円単位運賃はJR東日本と関東大手9社が導入する。
  • 準大手私鉄と公営事業者の認可状況。ICカード1円単位運賃は新京成電鉄と東京都交通局、横浜市交通局が導入する。また、一部の公営事業者はシステム改修に時間がかかるなどの理由から、改定時期を5~10月にずらす。
摩耶ケーブル線(神戸市灘区)を運営している神戸すまいまちづくり公社が3月3日、消費税率の引き上げ(4月1日)に伴う運賃改定を申請した。これにより、全国の旅客鉄道・軌道事業者の運賃改定の方針がほぼ出そろった。

鉄道・軌道事業者が旅客運賃の上限を設定・変更する場合、国土交通大臣に申請して認可を受ける必要がある。消費税率の改定に伴う運賃の変更も同様の扱いだ。ただし、実際に適用する運賃(実施運賃)は、上限運賃の範囲内であれば国交相への届出だけで変更することができる。もっとも、旅客運送を行っている事業者の多くは現行の上限運賃をそのまま適用しているため、大半の事業者が今回の消費税率引き上げに伴い旅客運賃の上限改定を申請している。

その一方、上限運賃の改定を申請していない事業者も存在する。3月17日時点で国土交通省本省や各地方運輸局への申請が確認できなかったのは、札幌市交通局・函館市企業局・青函トンネル記念館・ひたちなか海浜鉄道・銚子電気鉄道・山万・阪堺電気軌道・紀州鉄道・北神急行電鉄・鞍馬寺・岡山電気軌道・若桜鉄道・伊予鉄道・阿佐海岸鉄道・帆柱ケーブル・岡本製作所の16事業者に及ぶ。

このうち札幌市交通局は10月1日、函館市企業局は5月1日の運賃改定をそれぞれ予定しており、申請の準備を進めている。銚子電気鉄道は、消費税率改定分と通常改定分をあわせた運賃改定を6~7月頃に実施する方向で検討中。北神急行電鉄と伊予鉄道は上限運賃を据え置くが、もともと実施運賃が現行の上限運賃より低く設定されており、今回の消費税率引き上げに際しては現行上限運賃の範囲内で実施運賃を引き上げる。それ以外の未申請事業者は4月1日時点での運賃据え置きを決めているが、一部の事業者は割引切符の値上げを実施する予定だ。

既に認可・申請済みの事業者のなかにも、4月1日時点では現行運賃を据え置く方針を決めている事業者がいくつか存在する。たとえば東京都交通局の場合、運賃収受システムの改修に時間がかかるとして、都営地下鉄と新交通システム(日暮里・舎人ライナー)の運賃改定を6月1日に実施する。このほか、横浜市交通局も6月1日に市営地下鉄の運賃改定を実施。名古屋市交通局と名古屋ガイドウェイバスは9月1日に運賃改定を実施する。

名古屋臨海高速鉄道の場合、上限運賃は4月1日に改定するが、これにあわせて現行運賃と同額の実施運賃を設定し、実質的には据え置きとする。ただし運賃の改定自体はいずれ実施する方針で、同社は「改定運賃の公表から実施まで6カ月以上の周知期間を設ける」としている。このほか、熊本市交通局などが上限運賃を4月1日付で改定しつつ、現行運賃と同額の実施運賃を設定して実質据え置きにする。

運賃据え置きの方針を決めている複数の事業者に据え置きの理由を聞いたところ、システム改修などによる実施時期の繰り延べのほか、「もともと利用者が少なく、値上げで利用者がさらに減る恐れがある」「運賃案内の掲示物などの交換にかかる経費を考えると減益になる」などといった答えが返ってきた。このほか、1年半後の2015年10月1日に消費税率が再び引き上げられる(8%→10%)ため、今回は改定を見送って10%引き上げ時に改定することを検討している事業者もあるようだ。

改定率は上限運賃ベースで天竜浜名湖鉄道が13.9%と最も高くなっているが、これは収支改善を目的とした通常改定分が含まれている。それ以外の全ての事業者は全体の改定率を消費税率引き上げ分(5%→8%)の2.857%か、もしくは2.857%未満に抑えている。実施運賃ベースでも、全体で2.857%を超える改定を実施する事業者はないようだ。

改定率の内訳を見てみると、JRと大手私鉄の多くは普通運賃を2.857%以上引き上げるが、定期運賃と料金は2.857%未満に納め、全体では2.857%に収まるよう調整している。その一方、普通運賃を2.857%未満としつつ定期運賃や料金を2.857%以上にしている事業者、あるいは普通・定期ともに2.857%未満に抑えている事業者もある。

今回の運賃改定で注目されたICカード1円単位運賃は、JR東日本(首都圏・新潟・仙台)と関東の大手私鉄9社、関東の公営2局などが導入する。関東以外ではICカードの普及率が低いなどの理由から、大半が切符・ICカードとも10円単位での改定となる。関東以外でICカード1円単位運賃を導入するのは、JR東日本と仙台空港鉄道、伊豆急行の3社のみ。長崎電気軌道は上限運賃が1円単位で認可されたが、実施運賃は10円単位の現行運賃を据え置く。
《草町義和》

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