「ぜひ欧州にある1リットル3気筒ターボを!」半年前、『フォーカス』の試乗記で叫ぶように記し、「パワーのハンデをシャシーで取り返す、そんなフォードを待っている」とタイトルに掲げた。
それがきっかけではないと思うけれど、新型『フィエスタ』とともに、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーで2年連続ベストに輝いた、そのエンジンが上陸した。
でも試乗会のあと、ライバル車との比較取材も経験したいま感じるのは、エンジンだけが突出しているクルマではないこと。デザインからハンドリングまであらゆるファクターを高次元でまとめ上げた1台だった。欧州では安くて燃費がいいだけのコンパクトカーは売れない。コンパクトカーはライフスタイルを反映するツールであり、見た目や走りも大切。これは以前、欧州赴任経験のあるカーデザイナーに聞いた言葉だが、フィエスタはまさにその具現化だ。
スタイリングは全長4m以下とは思えないほどダイナミックで、安っぽさ薄っぺらさとは無縁。キャビンはフォーカス同様、 外から想像する以上に広い。そしてハンドリングはフォードスタンダード、つまりこのクラスでトップレベルにある。ブッシュなどの小手先でごまかすのではなく、サスペンションをしっかり動かして乗り心地とハンドリングを両立している。だからペースを上げるほど焦点が合ってくるという、走り好き向けの仕上がり。それでいて格上のクルマを目指して、無理に背伸びした感もない。小さく軽いエンジンを生かして、コンパクトカーでしか表現できない、自分がクルマの一部になったかのような身のこなしを味わわせてくれるのだ。
1リットル3気筒ターボエンジンの力強さにも感心したけれど、それ以上に、国籍に左右されない分、そのクラスに相応しいクルマをストレートにカタチにできるフォードのクルマ作りに好感を抱いたのだった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
森口将之|モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト
1962年東京都生まれ。自動車専門誌の編集部を経て1993年に独立。雑誌、インターネット、ラジオなどで活動。ヨーロッパ車、なかでもフランス車を得意とし、カテゴリーではコンパクトカーや商用車など生活に根づいた車種を好む。趣味の乗り物である旧車の解説や試乗も多く担当する。また自動車以外の交通事情やまちづくりなども精力的に取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員。