2013年秋に発売されたクラリオン『NX513』は、ベーシックな価格帯ながらキャンバスマップルのナビアプリ『マップルナビ』採用による充実の検索機能と、多彩なソース再生に対応したAV機能が特徴でヒットした『NX501』以来の系譜を引き継ぐ最新モデルだ。
新型機では車速センサー、ジャイロセンサーを搭載しナビ機能を大幅に強化しただけでなく、「スマートアクセス」対応でスマートフォンとのアプリ連携も強化してきている。ドライブ情報や観光地情報などを満載した『マップルナビ』も5へと進化し、さらに充実した検索機能やスマートフォンのようなフリック操作、快速レスポンスも特長となっている。
今回、クラリオンの開発関係者とマップルナビを提供しているキャンバスマップルの担当者をインタビュー。NX513の特徴や開発意図、また、グローバルプラットフォームを採用した狙いなどを聞いた。
インタビューに応じてくれたのは、クラリオン営業本部国内純正営業部宇塚博之氏、技術統括本部第二先行開発部ナビコアソフトグループ主査白木建司氏、同商品企画部 小口純子氏、事業推進本部事業推進室推進G伊藤直樹氏、そしてキャンバスマップル クラリオン営業部 部長 和中啓二氏、同企画部 次長 広瀬浩司氏の計6名だ。
◆『マップルナビ5』新しいバージョンアップの肝は“スマホとの相性”
----:まず『NX513』の特徴的なコンテンツといえる『マップルナビ』について、今回の改良点などについて教えていただけますか。
和中:2年ほど前、市販、純正、ディーラーオプションのどれに対しても十分な性能を持つクラリオンのNXシリーズに『マップルナビ』を提案しました。この際価格面でメリットも出したかった。さらにグローバルモデルのカーナビにふさわしいコンテンツにしたかった。それ以来、NXシリーズを代表するコンテンツのひとつとして採用しています。
広瀬:『マップルナビ』シリーズはクラリオンさんの機種に『マップルナビ3』から採用され、進化を続けています。今回のマップルナビ5のバージョンアップポイントは、UI・地図表現・新機能の3つとなります。UIについては、カーナビにもスマートフォンの操作方法や作法を採り入れました。スマートフォンとの相性をよくするため、タッチスクリーンでのフリック操作などに対応させた。これにより助手席の人もスマートフォン感覚でナビが操作できます。
「マップルおでかけバンク」というメニューはマップルのガイドブックのデザイナーが記事風の画面デザインを手がけ、雑誌を見ている感覚で目的地やスポットの情報を調べることができます。
----:地図機能についてはどうでしょうか。
描画スピードのアップはチューニングが大変でしたが、新しいNX513のプラットフォームが「OpenGL」に対応し、よりリッチな表現が可能になりました。画面の配色や道の太さなど地図職人がデザインしたような見やすさ、クオリティにこだわりました。
新機能として強調したいのは、「道の駅レコメンド」です。全国の道の駅の情報を網羅するだけなく、ルート案内中でもおすすめ情報などから中継地としての設定が簡単に、また施設への入り方も細かくガイドしてくれます。高速道路のSA、PAは入口の入り方は決まっているので簡単ですが、一般道上の道の駅にはさまざまな施設があります。道路のどちら側なのか、入口はどこに面しているのか、施設やルートによって変わってきます。マップルナビでは、ガイドブックでの取材情報や現地調査などから案内ポイントを複数設定し、どこからきても確実に施設へのガイドが可能です。取材データとカーナビの地図データとの連携はマップルナビ“ならでは”の特徴だと考えています。
◆NX513で新しいユーザー体験を…「日本市場にも対応したグローバルモデルに」
----:このようなコラボモデルの開発では、クラリオン、キャンバスマップル両社の連携が重要かと思います。どのような体制で開発したのでしょうか。
白木:今回、新しいプラットフォームを投入したので、ハードウェア、ソフトウェアの開発は同時に進められていました。これにアプリの実装作業も並行して行われましたが、開発の主体はクラリオンが行いました。
----:旧モデルNX502/NX501は、マップルナビ色の強い製品という印象がありましたが、インターフェースから地図の見栄えまで、NX513ではクラリオンらしい製品になったのはそのせいかもいしれませんね。キャンバスマップルとして苦労した点などありますか。
広瀬:OpenGLまわりのチューニングなど調整箇所が多く、センサー類などハードウェア部分とのつなぎ込みも増えたことは、確かに大変でした。しかし、マップルナビのブランドは尊重していただいたので、新しいプラットフォームとマップルナビの良さを出せたのではないかと思っています。
和中:今回の開発は、プラットフォームが刷新され、マルチタッチスクリーンやジャイロセンサーなど、われわれにとってはかなりハイスペックな機種での開発となりました。機能面でも新しいチャレンジができるということで、広瀬を含め企画・開発チームともに非常に高いモチベーションで取り組んでいました。
----:さきほど、市販だけでなく純正採用にも対応できるように、という話がありましたが、NX513の純正品展開は開発の段階から決まっていたのでしょうか。
宇塚:決まっていました。実際に製品を見ても、それが可能だと確信しました。というのは、プラットフォームにおいてグローバルモデルを意識し、コストダウンさせていながら、ナビ精度の向上やマップルナビのガイドブック情報など付加価値も高いという点で、コストパフォーマンスに優れた製品に仕上がったからです。例えば、目的地までの案内ですが、廉価モデルでは周辺に到達すると案内を終了してしまうものが多いのですが、NX513は目的地の入口まで、極端な言い方をすればドアツードアで案内してくれます。これらの点はメーカーからも評価されています。
----:市販の市場での展開においてNX513はどのような位置づけにあるのでしょうか。
伊藤:旧モデルはリーズナブルな価格とエンターテインメント性が評価されていた製品ですが、反面、目の肥えた日本のカーナビユーザーからすると機能面での不満があったかもしれません。NX513では、センサーの追加、ナビ精度の向上、新しいプラットフォームによる新しいUIやUX(ユーザー体験)を実現するなど、日本市場にも対応しているグローバルモデルだと思っています。
また、いままで上位モデルまでの対応だったスマートアクセスとの連携機能は、これらからのカーナビに必要な機能のひとつとして、積極的に展開していきたいと思っています。