【プリウスPHV+SonicPLUS THE CREST】83万円!ソニックデザインのプリウス専用スピーカーを試す

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昨年3月のことだった。購入したばかりのトヨタ『プリウスPHV』に対して、ハイエンドカーオーディオブランドとして評価が高いSonicDesign(ソニックデザイン)から登場したばかりのプリウス専用の純正置換え用スピーカー「SonicPLUS」を試してみないかと誘われてレポートを行った。

そして約1年半が過ぎたこの秋、新製品への交換の提案を受けた。しかしその商品の値段を聞いて尻込みした。なんと「SonicPLUS THE CREST <ダブルクレスト>」は前スピーカーだけで83万円もするハイエンドスピーカーだったのだ。

筆者のオーディオの常識では83万のスピーカーは83万程度のアンプで駆動し、音源であるプレーヤーも83万程度の良質なモデルを使わねば、ボトルネックが生じて音質評価にならないのではないかと心配した。なにしろプリウスPHVに装着されているオーディオヘッドユニットは純正のカーナビユニットなのだ。

しかし、ソニックデザインの佐藤社長によると、プレーヤー部、アンプ部は純正カーナビでOK、スピーカーだけダブルクレストに取り替えて聴いてみてくれというものだった。


◆「クレイジーな金属のカタマリ」…ハードウェアレビュー

先頃掲載された内藤氏のレポートにもあるように、SonicPLUSシリーズは対応車種を増やして人気を博しているようだ。現在では30車60機種にも展開される一大ブランドに成長した。そしてこの秋に登場したのが「SonicPLUS THE CRESTシリーズ」。外磁型ネオジウム磁気回路を使ったプレミアムラインNクラスユニット「SD-N52N」と「SD-N77N」を合計6本使用した「トリプルクレスト」が153万円。大径フェライトマグネット磁気回路のプレミアムラインRクラスユニット「SD-N52R」と「SD-N77R」を合計6本使用した「ダブルクレスト」は83万円。プレミアムラインFクラスユニット「SD-N77F4本」と18mm口径マイクロファイバー・ドームトゥイーター2本を組み合わせた「シングルクレスト」ならば45万円というラインナップである。

トリプルクレストで使われるプレミアムラインNクラスユニットは、その強力な磁気回路ゆえアンプを選ぶ製品だという。その点「ダブルクレストのプレミアムラインRクラスユニットは高音質とともに純正カーナビのアンプ性能でも駆動できる使いやすさを兼ね備えている」と説明するのはソニックデザインの兼田弘喜氏。一方、シングルクレストはトゥイーターが昨年装着したSonicPLUS「SP-P30E」と同じ18mm口径マイクロファイバー・ドームトゥイーターである。忘れてならないのはすべてのTHE CRESTには一体鋳造アルミダイキャスト製ウーファーが奢られていることだ。ここにソニックデザインのこだわりが詰まっている。

カジュアルラインSonicPLUSのウーファーは、汎用サイズの樹脂カップにアルミの蓋を合接したハイブリッド構造のエンクロージュアと車種別のスペーサーを一体化した専用設計だった。THE CRESTのウーファーエンクロージュアはプリウスの純正スピーカー形状、ドアの裏側スペースを加味して目いっぱいの容積を確保した一体鋳造アルミダイキャスト製である。写真を見てもらうとわかると思うが、ボックス部とバッフル面はボルト結合されているわけではない。ましてや溶接でもない。77mmユニットが2本収まる開口部と小指2本程度のバスレフ穴を塞ぐと水一滴漏れない一体鋳造である。

今回、ダブルクレストとトリプルクレストにはダッシュボード上部の純正トゥイーターを交換するスピーカーに対してもエンクロージュア型を採用している。搭載される52mmのユニットはトゥイーターではなくワイドレンジユニットである。こちらも一体鋳造エンクロージュアには変わりないが高音域ゆえ密閉型を採用している。

ふたつの金属のカタマリを並べて内藤氏とふたりで笑ってしまった。「クレイジーだね」と。これで殴れば確実に人が死ぬ。というのは冗談として、高価なメルセデスに対して「Sound Suite」というハイエンドオーディオを提供する姿勢は、最高のクルマに最高のオーディオという納得のコンセプトだが、庶民が乗るプリウスに対してこの気迫はどうであろう。もちろんプリウスも世界最高のエコカーとして誇れるものだが価格のバランスが・・・。いや、アンバランスゆえ作り手の音に対するクレイジーなこだわりがこの金属エンクロージュアからビンビン伝わってくるのだ。

一方で取り付け作業は肩透かしを食うほどあっけない。純正のツイーターとフロントドアウーハーをボルトオン&カプラーオンで簡単に取り付け取り外しできる。車種専用エンクロージュア型スピーカーとしての「SonicPLUS」のコンセプトは完全に踏襲されているのだ。山頂を表す「THE CREST」にリアドア用ユニットの設定がないのは、この製品が運転席または助手席のみでただひたすら高音質のサウンドを求める人々に向けた、いわば買い手を選ぶ製品だからだ。


◆「取り外したSonicPLUSに中古価値を感じた」…取り付けレビュー

推奨取り付け時間はカジュアルラインのSonicPLUSの2時間に対してTHE CRESTは3時間となっている。実際のところ、ボルトオン&カプラーオンの取り付け工数は、純正スピーカーもSonicPLUSもThe CRESTも一緒だそうだ。ただし、扱うモノが高価で重く万一のことがあってはならない。また取り付け後の配線確認も念入りに行いたいということで1時間余裕を持たせているということだ。

実際に作業現場で見学してみると、1年半前に取り付けたSonicPLUS「SP-P30E」がすぐに取り外された。濡れたドアウィンドウをしまい込む構造のドア内部は水が入り水が抜ける構造になっている。しかしエンクロージュア方式のSonicPLUSはまったくの影響を受けていないようにきれいである。ソニックデザインのエンクロージュア型スピーカーが中古相場で高値が付く理由を垣間見ることができたのは収穫である。THE CRESTは高価な商品であるが、クルマを買い換えるときにポンと外して中古相場でその価値が分かる人に高く手放し、クルマはクルマで純正スピーカーに戻して手放すことができる。

自分はホームオーディオも好きで高価なモデルを買い揃えたりしているが、実はすべて中古である。評価が高いモデルなどは25年経っても新品時の半額程度で取引されることもある。カーオーディオも中古相場が高いモデルであれば、購入価格が少々高くても納得できるのではなかろうか。


◆「この低音は音量を伴うとクセになる」…音質レビュー

いよいよ音質に迫りたい。

カジュアルラインSonicPLUSとTHE CRESTの音質比較はハードウェアを見てのとおり。オーディオというのは物量に正直であると改めて感じた。金属のカタマリの堅牢なエンクロージュアはカジュアルラインのSonicPLUSに比べて2.5倍以上の容積がある。この金属エンクロージュアが支える低音域こそがソニックデザインがオーディオブランドとして名を馳せた最大のキャラクターだとよく分かる。

デッドニングという言葉を聞いたことがあるだろう。カーオーディオにおいて、ウーファーが取り付けられるドア部全体の開口部を閉じ、制震&吸音することでスピーカーユニットが持つ性能を引き出そうというテクニックである。一体鋳造アルミダイキャスト製のエンクロージュアはその究極である。エンクロージュアを堅牢につくり箱を鳴らさないというコンセプトは、最近のホームオーディオでも主流になりつつある。大口径のウーファーでは絶対に出せないスピード、”やわ"なエンクロージュアではとうてい叶わない正確で引き締まった音程。これを求める人はソニックデザインがつけたプライスタグに従わなければならないのだ。

車内で聞くTHE CRESTは音場系というよりも音像系である。近距離、目の前のダッシュボードの上にホリー・コールが妖艶にたたずむ。定位はミリ単位で正確だ。純正カーナビにはプリウス用のタイムアライメント初期設定が用意されていたが、耳で聴きながらマニュアルで左右に音像を動かすのは容易である。カジュアルラインの音とは同じ方向性だが、THE CRESTの音は10枚くらいフィルターを取り除いたのじゃないかと思うくらいダイレクト感が増している。

ボーカリストは声帯の振動を空気に伝えて発声していると思っていたがTHE CRESTを聴いてはじめて間違いだとわかった。歌手は自身の体を、楽器のように共振させて声を発していたのだ。しかも曲によって、部分によって共振のさせ方を変えながら歌を発する。金属エンクロージュアが鳴かないからこそ表現できる領域だろう。

マイケル・ジャクソン「THIS IS IT」のブルーレイディスクを音量を上げて聴いてみる。そう、わたしのプリウスPHVに装着されているトヨタ純正ナビはブルーレイディスクを再生できるモデルなのだ。もちろん走行中は映像は見ることができない。音のみである。幻に終わったマイケルのコンサートだが、実際のライブとなれば床が震えるほどの爆音が会場を埋めたはずだ。クルマを降りて確かめてみたが、ここまでの音量だとさすがのソニックデザインでもプリウスから大量の音漏れが発生している。自宅駐車場では近所迷惑になりそうな音量だ。

ところが、どこまで音量を上げてもTHE CRESTはクリアでハイスピードなのだ。ロックコンサートでは音が飽和するのも魅力のひとつかも知れないがTHE CRESTではそれは叶わない。ドラムはシャープにリズムを刻み、ベースは楽譜を見ているかのように明瞭である。低音にスピードを求めるか量感を求めるかは聞き手の音楽観に左右される。自分は低音楽器を弾いていた経験を元に聴いているからか、低音の音程が分かることと遅延せずズバッと聞こえることは最重要である。そのうえでピラミッドバランスを得る量感も欲しいと感じ、イコライザーを使い低音域を持ち上げた。

低音がカットされているから解像度が高いのではないか。カットされた低音を持ち上げても何にもならない。こんな勘ぐりを払しょくするために10Hz、15Hz、20Hz、25Hz、30Hz・・・と5Hz刻みのテスト信号WAVファイルをつくり、CD-Rに焼いてスピーカーの再生能力を試してみた。結果30Hz~35Hzまで重低音を放っていた。この数字は驚くべきことに160mmのダブルウーファーを持つの自宅スピーカーよりも5Hzほど低い音域だ。

それにしても音楽ソースをここまでの爆音で聞くことができるのはカーオーディオならではの体験だろう。防音されたオーディオルームを持っている人は別かもしれないが、ホームオーディオでは絶対にありえない。爆音どころか深夜に小音量で聞いてはいまいか。良いスピーカーも高価なアンプもそこそこ音量を出してこそ実力を発揮するのだと自戒を込めて記しておこう。


◆「生演奏をも凌駕した」…ハイエンドオーディオの可能性

オーディオ趣味とは音楽の深淵に魅せられた者が、演奏で表現されるかすかな響き、歌に込められた心のひだに、電気信号を経由した物理的な音のみで迫ろうという、音楽に対する敬意と挑戦へのエネルギーに他ならない。

自分の場合は、演奏会の生演奏とオーディオ再生を行ったり来たりすることも、道を見失わずにレベルアップするためには必要なことだと思っている。

THE CRESTの装着に前後して、サントリーホールで行われたヨーヨー・マのソロリサイタルとウィーンフィルとブッフビンダー(ピアノと指揮)によるオーケストラ演奏会に二夜、実際に足を運び、かつ2枚のディスクを聴き込むことにした。

ヨーヨー・マが10月28日に演奏したのはバッハ・無伴奏チェロ組曲1番、2番、3番である。マは同曲の録音を80年代と90年代に二度行っており、今回の試聴ディスクは97年に発売されたもの(ASIN: B001FOSJZI)で行った。

ヨーヨー・マの場合、ライブの演奏といえどもミスは皆無で完璧である。毎日のように行われる演奏会なのに、いつも100%の情熱で完全燃焼することができるのが超一流の証なのだ。ところが最高の生演奏のあとにTHE CRESTを聴いて悟った。音質面だけで切り取ればチェロの独奏においてTHE CRESTはすでに生を凌駕している。

本人がそこにいて楽器を弾く姿を見ながらのライブでは、ヨーヨー・マの生き様や大きな音楽のうねり、そこに感じる作曲家バッハの存在など、情報量の多さと興奮状態がゆえ「音」に集中できていなかったのかもしれない。

THE CRESTで聴くヨーヨー・マは、まず演奏者に近い。目の前に自分のために弾いてくれている。そして無伴奏チェロの再生には4つの響きあると演奏は語りかけてくれる。ひとつは楽器の響き。(ヨーヨー・マは300年前の銘機ストラディバリウスを使っている。)つぎにホールの響き。(マは演奏中天井を見ながら引いていることが多かった。きっと彼は自分のチェロを通じてホールを鳴らしていたのだろう。)つぎにスピーカーの響き。(THE CRESTは箱鳴りをさせないでソースの音のみを再現することに集中している。)最後に部屋の響き。(車内の音響特性。)

THE CRESTは高音域を受け持つ堅牢なエンクロージュアによって、楽器の響きとホールの響きを完全に描き分けた。ウーファーが受け持つチェロの胴鳴りとのつながりも完璧だ。その結果、何より驚いたのはヨーヨー・マはバッハの演奏の各フレーズにおいて、楽器の響きとホールの響きを使い分けている事実を発見したことだ。演奏会ではマのそこまでの音質コントロールを聴き分けることはできなかった。

ウィーンフィルハーモニー管弦楽団による11月12日のコンサートは世界的なピアニストであるルドルフ・ブッフビンダーによる演奏と指揮による、ベートーヴェンのピアノ協奏曲2番、3番、4番である。通常、協奏曲はソリストに対してオーケストラに指揮者が立つが、ブッフビンダーは自らピアノを弾きながら指揮もする。

当夜の演奏があまりにも素晴らしかったので、コンサートの休憩時間に同コンビのウィーンでの2011年の演奏会の模様を収録したブルーレイディスク(ASIN: B00DWJ5H4K)を購入し、興奮冷めやらぬ帰りの車内でディスクを聴いたわけだ。

オーケストラの再生はオーディオでは不可能だというのが私の持論だ。100人もの音楽家が2000人収容の大ホールをブワン!と鳴らしたものを2本のスピーカーと狭い部屋(車内)で再現できるわけがないと。しかしTHE CRESTでヒントは得られた。音量と解像度の両立である。大音量かつスピードを兼ね備えた低音の解像度が聴いたばかりのオーケストラのイメージを彷彿とさせた。まだ大ホールの空間再現性ではホームオーディオが有利だが、カーオーディオは音量でアプローチすることができるのではないか。


◆音響環境が整うと、走行ノイズの大きさが気になってきた…もっと良くなる

THE CRESTがプリウスにインストールされて、我が家ではオーディオ再生のプライオリティがホームオーディオから変化してしまった。カーオーディオの良い所は気兼ねすることなく音量を確保できることである。走っている時ばかりではない。週末に子供を習い事に送り、帰宅しないで車内で待っている時間などはプラグインハイブリッドはアイドリング始動しない無音の車内で音楽に集中することができる。

唯一残念だったのは、高速道路での走行ノイズの多さである。プリウスには燃費のためにエコタイヤが標準で取り付けられているがこれがうるさい。燃費はもう十分なので次は静音性が高いタイヤを選ぼうかと思案している。それでもダメならば高速を諦めるかクルマを買い換えるしかない。
《三浦和也》

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