【三菱 アウトランダーPHEV 試乗】高品位な走りと非常電源機能は選ぶ価値あり…津々見友彦

試乗記 国産車
三菱・アウトランダー PHEV
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2代目となった三菱のミドルクラスSUV『アウトランダー』をベースに、プラグインハイブリットシステム(PHEV)を組み込んだモデルが、この『アウトランダーPHEV』である。

ボディスタイリングは一代目の精悍な趣から、マイルドなイメージに変わりアーバンSUVとしてのポジションを狙った様子。市場投入直後に、ディーラー内でリチウムイオンバッテリーが発熱、溶解する事故が起き、リコールが発生した。

期待していたクルマだけに、原因の早期究明を望んでいたが、三菱側の発表によると、バッテリーの生産工場内でのテストベンチの搭載中に誤って作業員が床に落としたことが原因で内部が破損、充電中にリークして発熱したことが理由と発表された。今後は人手での作業を避け、機械化により、再発を防止するとのことだ。

リコールにより、新しいリチウムイオンバッテリーが交換された試乗車、「Gナビパッケージ」を試すことが出来た。

インテリアの基本はシルバーと黒。センターパネルはピアノブラック。エアコンのスイッチはタッチパネルではなく、ダイヤルなどで、使いやすい。メーターは二眼タイプ。左に電流計、右にスピードメーター。センターにはマルチインフォメーションディスプレイで見やすくレイアウトされている。セレクターレバーはチタンカラーの短めのジョイスティックでクリック感のある手応えで操作性も良かった。

アイポイントも高めで前方視界の良いコクピット。パワースイッチを押しシステムを起動。が、PHEVであるアウトランダーは当然エンジンがかかることはなく、静かにエアコンから冷気が出るのみだ。センターのディスプレイにバッテリーで32km、燃料とのトータル走行可能距離は416kmと表示される。これだけ充分な可能走行距離は、ただのEVと比較すると安心感が格段に高い。

Dレンジにシフトしブレーキを放すと静かにクリープで動き出す。アクセルを踏込むと更に滑らかに加速する。このスムーズですべるような滑らかさこそ、EV最大の魅力。パワートレーンのみならず、パワーウインドやワイパーの作動音も非常に静かで高品位な雰囲気があった。

高速道路に入っても余程の急加速をしない限り、EV走行のまま。モーターで心地好く走る。市街地ではアクセルを閉じると直に回生が始まる。この回生ブレーキの強さは左のパドルで6段階に調整できるので、その場に応じてアジャストし前車との距離のコントロールがしやすい。欲を言えば、無段階だと更に使いやすいだろう。

停止からフルスロットルの0-400m加速の雰囲気は16秒台後半ぐらい。軽快な部類だが、とは言え、発進直後のトルク感はハイブリッドとしてはやや大人しい。おそらく意識的にジェントルに制御しているのだろう。とは言え、常用する40km/h前後になるとモータートルクはリッチで、気持ちよくアクセルに応答し、ストレスのない走りが楽しめる。

エンジンは高速になってからのみ駆動する。発進加速の際も途中からエンジンが発電(シリーズ方式)しモーターに電気を供給するためエンジンサウンドも高まってまるでエンジン走行している雰囲気だった。高速になった時にはエンジンで駆動した様子だが、とてもスムーズな切り替えで不快な振動も皆無だ。

試乗では一般道路、高速道路含めて走行した。当初の40km弱での走行では大半はEV走行で、平均燃費は53.2km/リットルと流石PHEVの威力だ。テストのために急加速など複数回試し、更には33度の外気温のためにエアコンをフルに使用したが、それがなければ一滴のガソリンも使用せずに走れただろう。

スムーズで静粛性が高く、快適な走り味で、疲労が少ないのは嬉しい。クルマとして大満足だった。またハンドリングは床下のバッテリーのため低重心で素直な操縦性は安心感が高かった。ブレーキもスムーズで、違和感がない。

電費(燃費)をみると、この日の走行距離は38km。EVで95%を走行した。一回のフル充電ではおよそ300円程度とすると今回の実電費の電気代は7円/1kmとなる。もしガソリンのアウトランダーの場合、実燃費はおよそカタログの7掛けとして、10km/リットルとすると、ガソリン代は16円/1kmとなる。圧倒的にPHEVが安い。

が、悩ましいのは購入時の価格。ガソリンアウトランダーに比較して90万円程度高い。レギュラーガスの価格を160円として、ガソリンアウトランダーならこの90万円で5-6万kmは走れる。

個人の懐だけを考えるとノーマルのアウトランダーがやはり安い。だが、CO2削減の環境に対する責任とEVのスムーズで快適な走り、それにいざと言う時にオプションだが、AC電源仕様にすると、一般的な使い方で10日間の100V電源を持てると言う、大震災が予測される日本では90万円高のPHEVを真剣に検討する価値はありそうだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

津々見友彦|モータージャーナリスト
第1回日本グランプリに出場。日産、トヨタ、いすゞの元ワークスレーシングドライバー。現在はモータージャーナリストとして活躍。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。その他にポルシェクラブ・ドライビングスクールの講師も務める。趣味はハイスピードドライビング、モーターグライダー、パソコン。最近はデジカメと電気自転車に凝っている。

《津々見友彦》

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