【ホンダ フィット 試乗】1.3リットル+CVTも効率アップ、試乗燃費は16.3km/リットル…井元康一郎

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9月5日にデビューしたホンダの主力コンパクトカー『フィット』第3世代モデル。走行性能や燃費性能の向上をはかるべく、車体、パワートレインとも完全新規設計された意欲作である。その新型フィットに短距離ながら試乗する機会を得た。

最初に乗ったのはベーシックな「13G Fパッケージ」。新開発の「L13B」型1.3リットル直4エンジンは熱効率の高いミラーサイクル方式で、アイドリングストップシステム装備。そのパワーを制御する無段変速機CVTも新規開発品。JC08モード走行時の燃費は24.4km/リットルと、旧型のハイブリッドに迫る数値だ。そのパワートレインについてリポートする。

進化著しいCVT制御

走り出してまず印象的なのは、CVTの制御の進化。エンジン負荷の小さい市街地走行や高速道路のクルーズ時は、エンジンの熱効率の良い低回転域を徹底的に使うセッティングで、エンジン回転数があまり上がらないまま、変速比を変えることで車速がどんどん乗っていくというフィーリングだった。一方、高速道路の流入時など急加速時は、エンジン回転の上昇と車速の乗りがリンクする、有段ATの3速キックダウンを思わせるようなシフトプログラムが組まれていた。

スロットルを全閉にすると、エンジンの燃料カットが行われる下限と思われる1000回転+αで空走する。もともとCVTは燃料カットを積極的に使うのに向いた変速機なのだが、新型CVTは従来のエンジン+変速機だとストールしかねないくらいの低い回転数を保持するため、エンジンブレーキによる失速が非常に少ない。試乗時、旧型だと再加速を余儀なくされるようなディスタンスでアクセルを抜いても、後続車に迷惑をかけることなく信号まで慣性走行することができた。アクセル全閉で稼げる空走距離の長さは非ハイブリッドカーのなかではトップクラスと思われた。

◆効率の高さを実感できる新型のミラーサイクルユニット

もうひとつ印象が良かったのは新型エンジンのエネルギーコントロール。ミラーサイクル化でエネルギー変換効率のピーク値は実に37%に引き上げられたのだそうだ。筆者の知る限り、非ハイブリッド用ガソリンエンジンとしては目下、世界最高スペックだ。

その効率の高さは瞬間燃費計のゲージの動きからも明らかに伝わってくる。車速が乗ってスロットル開度が小さくなると、瞬間燃費計のゲージはエアコンのコンプレッサーが作動している状態でもほぼ30km/リットル以上に常駐。車速が上がる首都高速でも大体30km/リットルを挟んだ動きを見せていた。

ホンダのコンパクトカーはクルーズ燃費の良さが特徴で、筆者も群馬~栃木~茨城の空いた一般道を『フィットシャトル』の初期モデルで省燃費走行したときに満タン法で24.5km/リットルをマークしたことがあるが、新型フィット1.3リットルの燃費は旧型と比べてもさらに10%以上の上乗せが期待できそうな感触だった。

◆悪条件ながらも試乗燃費は16.3km/リットル

今回の試乗時の平均燃費計値は16.3km/リットル。試乗コースは首都高速みなとみらいランプから山下町ランプまでの約3.5kmを挟む合計10.7kmで、コンディションは暖気ずみ、エアコンON、ECONモードOFF、1名乗車。市街地の混雑が激しく、途中で3キロあまりの首都高速を挟んだにもかかわらず平均車速が15.3km/hときわめて低速にとどまったわりには良好なスコアと言える。

あまり燃費を落とさずにすんだのは、ひとえに旧型の非ハイブリッドモデルにはなかったアイドリングストップシステムのおかげだろう。

◆モード燃費で先行された“デュアルジェット”エンジンのスイフトとの実用燃費対決にも注目

一方、エンジンのパワー感、騒音、振動など、いわるゆ官能評価の部分については、旧型に比べて進歩したという実感はあまり持てなかった。

1.3Gはフィットシリーズの中でもボトムエンドで、スターティングプライスが126万5000円からと安いぶん、遮音材、制振材などの使用量も上位グレードに比べて少なくせざるを得ず、それがエンジンノイズの室内透過音が大きめになる最大要因であろう。

ホンダご自慢の熱効率向上技術であるエンジンの急速燃焼も、騒音面ではハンディキャップとなっていると推測される。あくまで体感ではあるが、同クラスのライバルとの比較では、平均以上ではあるがベストオブクラスでもないように思われた。

一方、新型CVTのほうはエネルギー伝達効率やレスポンスだけでなく、ノイズ面でも大きな進化を遂げていた。CVTにありがちな“ウィィン”“シャーッ”という感じの、金属がこすれ合う音は、他のノイズにまぎれてほとんど耳に届かない。また、発進時に加速度が小さくなると実に素早く変速比を上げてエンジン回転数を低めるようにプログラミングされており、それほど小さくないエンジン騒音を下げるのに貢献していた。

総じて、新型フィット1.3リットルモデルのパワートレインの印象は、快適性や爽快感といったエモーショナルな部分はそこそこに、とにかくエネルギー効率の向上に的を絞って開発されたという感じのものであった。

が、燃費競争は昨今激しさを増すばかり。車両重量1000kg台のモデルで比較すると、JC08モード燃費はスズキが先般発売した『スイフト』のツインインジェクターを持つ“デュアルジェット”エンジンの26.4km/リットルに次ぐ2番手に甘んじることになったのは、ホンダのエンジニアにとっては少なからずショックだったことだろう。モード燃費に比べて負荷が高いオンロードでの燃費で逆転できるか否かも興味深いところだ。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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