フィアット『500』をベースにしたスポーツモデルがアバルト『500』で、その中でも最もスポーティなモデルとして位置づけられるのが『595コンペティツォーネ』だ。外観デザインではツインデュアル・エグゾーストパイプが、内装ではアルカンターラ/レザーの表皮を採用したサベルトのバケットシートなどが専用の仕様として設定されている。搭載エンジンは直列4気筒1.4リットルのインタークーラー付きターボ仕様。118kW/206Nmのパワー&トルクを発生する。走行モードの切り換えスイッチが設けられ、スポーツモードを選択すると最大トルクが230Nmにまで高められる。パドル操作に対するレスポンスも向上するので、一段とスポーティな走りが楽しめるようになる。アクセルを踏み込むと、一瞬のターボラグの後、エンジン回転が2000回転に達したあたりから強烈な加速が発生する。ラグはセミATによる部分もあるが、スポーツモードを選択するとラグを感じさせないくらいの加速が味わえる。このあたりがアバルトの本領発揮である。205/40R17タイヤを履き、KONIのFSDショックアブソーバーを採用するなど、専用にチューンされた足回りは、極めて優れた操縦安定性を発揮する。それもガチガチに硬いのではなく、一定程度に乗り心地にも配慮した足回りである。同時期に試乗した『595Cツーリズモ』に対して、より硬めの足回りかと思ったが、595系の足回りは基本的に共通だという。ボディの違いが多少は影響しているのかもしれない。595コンペティツォーネは正にアバルトを象徴するグレードといえる。300万円を超える価格は決して安くないが、走りの楽しさを求めるユーザーには納得できる価格だろう。■5つ星評価パッケージング:★★★インテリア/居住性:★★★パワーソース:★★★★★フットワーク:★★★★オススメ度:★★★★松下宏|自動車評論家1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。