【次世代 中国トヨタ 2013】ワークフローをiPadでカイゼン、新e-CRBのディーラーオペレーション

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トヨタは販売現場の「カイゼン」の一環として、ディーラー向けクラウド型顧客連携ツール「e-CRB(evolutionally-Customer Relationship Building)」の構築を進めている。中でも、次世代e-CRBをもっとも早く導入し、販売ワークフローの最適化をすすめているのが、中国・広汽トヨタの旗艦店にあたる第一店だ。

その最大の特徴は「iPadシフト」にある。

トヨタ自動車 常務役員の友山茂樹氏は、「iPad導入以前のe-CRBとは、ワークフローから店内の様子に至るまで、まったく異なる。タブレットの導入は目的ではなく、業務フローの『カイゼン』こそが目的だからだ」と話す。目的は、同店での顧客対応の最適化だ。

その狙いは徹底しており、最初の顧客対応から実際のセールス、そして販売後のサービスまでがつながり、徹底的な「ネットワーク化」「タブレット活用」「効率の見直し」が行われている。


◆来店から3分で97%の顧客に対応、店のあらゆる場所が「セールスの現場」に

そのアプローチを、まずは「顧客の来店」から「セールス」まで、順を追って見ていこう。

広汽トヨタ第一店の入り口には、車寄せに向けてカメラが設置されている。目的は、来店した車を認識し、それに乗っている「客」を知るためだ。その来店者が新規顧客なのか、それともデータベースに登録済みの「再来店顧客」なのかを、ナンバープレートの情報から自動認識する。するとその情報は、店内受付にあるiPadに伝えられ、氏名・属性・担当セールスパーソンが表示されるようになっている。受付担当はそこからすぐに、社内に控えているセールス担当者に情報を伝え、来店顧客を迎える準備をする。

第一店で働くセールス担当は、全員がiPadを持っている。当然通信でつながっており、店内のどこにいても、マネージャーや受付担当からのメッセージが届くようになっているし、顧客の個人情報も、販売する車の詳細情報も引き出せる。だから、セールス担当はiPadを持って、とにかく顧客の元に向かえばいい。

そこまでの時間は、約3分以内。客が店の玄関をくぐる時には、すでに担当が控え、情報を抱えて対応する体制ができているのだ。

iPadを使った次世代e-CRBを導入するまで、見積もり作成やグレード・装備のシミュレーション(TSV)をPCでおこなっていた。データの利活用という点ではiPadに近いことができたが、必然的に「PCが設置された席」に顧客を誘導する必要があった。セールス担当も、PCがある「席」に縛られていた。結果、「商談席待ち」が起き、セールス担当の動きも鈍かった。

次世代e-CRB導入まで、顧客の来店から対応までは、最長で40分も待たせる場合があった。だが、次世代e-CRB導入後は、97%の顧客に対し、3分以内での対応開始が可能になったという。

このため、店内の人の動きも、従来とはまったく違ったものになった。デスクに固定されたパソコンはなくなり、バックエンドにあるのは、iPadの充電器とキーボードと、自由に座れる長机だけ。コールスタッフや事務スタッフなどはパソコンを使っているが、セールス担当用のパソコンはない。店内でも、車の横やソファなど、あらゆる場所が「セールスの現場」になった。


◆経験が少ないスタッフも「エース」並に、顧客ホスピタリティも向上

スピードは大切だが、それだけが目的ではない。「一人の顧客に対し、じっくりとより長い時間をかけて、綿密なご対応が可能になった」(友山常務)ことが大きい。

現在、iPadを使う自動車ディーラーは少なくない。その多くは、店頭でのインタラクティブなカタログとしての活用だ。広汽トヨタ・第一店でもそうした活用は行っているが、それだけにとどまらない。

顧客が自分でカタログを見ている時の情報は、次世代e-CRB側に取り込まれる。どのようなオプションに興味をもったか、といった、セールスに価値を持つ情報が含まれているからだ。セールス担当は、そうしたデータを見つつ、顧客に対応する。顧客情報の中には、その顧客のSNSの情報も含まれる。SNS上に公開された、顧客の嗜好や家族構成などを参考に、より最適な、車の仕様やオプションを提案するためだ。そのための提案の方針は、次世代e-CRBに蓄積されたこれまでのセールス情報から作られ、iPad上に提示される。

顧客の立場を分析した上で適切な提案をする、というテクニックは、セールスパーソンならば誰もが身につけておくべきスキルだ。だが、それを実践するには相応の経験が必要になる。すべてのセールスパーソンが同質に行うのは難しい。だが、次世代e-CRBにおいては、iPadとその後ろにある業務支援システムを使うことで、まだ経験が薄いスタッフでも、ある程度質の高いセールス対応が行えるようにしている。単に営業成績の確度を上げるだけでなく、顧客の情報をしっかり覚え、顧客に対して親身でクオリティの高い対応をできるようにする、という目的もある。

顧客側から「値引き」を求められた場合なども、iPadが活用される。これまでは、マネージャークラスに決済を受けるため、セールス担当が顧客の元を離れる必要があった。だが次世代e-CRBでは、iPadからマネージャーに判断を促すメッセージを送り、その場で判断と承認を得ることができるようになった。顧客を一人にすることなく、より短時間で対応できるため効率の面でも、顧客へのホスピタリティの面でもプラスとなる。

同様に、セールス後の各種手続きや、その結果の納車日確定といった情報も、iPad上でその場でわかる。サインもiPad上だ。紙に印刷することはない。あくまで「スピード」と「わかりやすさ」を重視した形を採っている。

効率とホスピタリティ。この両面の追求こそが、次世代e-CRBが狙った「販売のカイゼン」といえる。



《西田 宗千佳》

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