【インタビュー】ニュルFF最速ラップドライバー「ニュルなしの開発は考えられない」

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ルノー・スポールのロラン・ウルゴン氏
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  • 鈴鹿テスト中のメガーヌRS

ルノー・スポールテクノロジーズは鈴鹿サーキット及び一般路において、テストを行った。そのテストには、ニュルブルクリンクFF最速タイムを叩き出した、ロラン・ウルゴン氏も同行した。

ウルゴン氏は『メガーヌRS』で、ニュルブルクリンク(以下ニュル)市販FF車最速タイムである8分7秒97を叩き出したルノー・スポールのテストドライバーである。なお、今回の鈴鹿サーキットのベストラップはメガーヌRSの2分33秒328(フルコース)であった。

---:どんな子供でしたか?

ウルゴン氏:真面目で頑固な子供でした(笑)。父親がボルボトラックのテストドライバーで、その影響もあり、クルマが大好きでした。また、テストドライバーにもとても興味があったのです。

---:最初はどのような仕事をしていましたか。

ウルゴン氏:パリの郊外にある小さなサーキットのテクニカルディレクターでした。そこで、4WDやカートなどのドライビングスクールの担当をしていました。そこでは、ベンチマークテストの担当もしており、これは、色々なメーカーからの依頼で、自社と競合との比較を行い、プラスとマイナスの点を全てチェックするというものでした。ここでほとんどのブランドを経験しましたので、その後の仕事に非常にプラスとなりました。

この経験から、PSAからテストドライバーとしてヘッドハンティングされ、5年間働きました。最初はベルランゴを担当したのですが、このクルマは、複数のエンジン、複数の重量、商用車と乗用車などの複数のボディタイプがあり、勉強するためにはとても良いクルマでした。その後、C4ピカソ、407と407クーペを担当しました。

そして、フィリップ・メリメさん(現ルノー・スポール チーフシャシーダイナミクスエンジニア)にヘッドハンティングされてルノー・スポールに入社したのです。

---:普段はどのような仕事をしているのでしょうか。

ウルゴン氏:5~6割ほどはクルマの中で過ごしています。自社だけではなく、競合も全て乗らなければいけないので、これがメインの仕事です。ここで感じたことを、レポートにするので、残りの4割くらいは、事務所でデータのレポートを作っています。それ以外では、マーケティングのイベントや、ニュルのタイムアタック、今回の鈴鹿のようにテストへ出かけています。

---:メインとなるテスト内容はどのようなものですか。

ウルゴン氏:パワーステアリング、前後のサスペンションのスプリングやダンパー、ロワーアーム、アンチロールバー、トーションバーなどのダンピングシステム全てです。タイヤとホイールも担当します。さらに、クルマ全体の捩じり剛性もシャシーセッティングに影響してくるので、それも担当します。そして、これらのまとめ役でもあるのです。

ここまで多岐にわたるのは、それぞれのセッティングポイントについて、サプライヤーと一緒に仕上げていくわけですが、例えば、サスペンションセッティングを変えると、パワーステアリングが微妙に反応するというように、全てが関連してくるからです。そして、これらひとつひとつを承認して達成ポイントを作りながら、最後までクルマを仕上げていくのです。

---:ウルゴンさんが持っている、ルノー・スポールのイメージとはどのようなものですか。

ウルゴン氏:スポーティさです。自分の担当はシャシー関係なので、そこでスポーティさを追い求めていきます。そのことはエンジンもそうで、それを組み合わせるとルノー・スポールが出来上がるのです。ただし、スポーティさを高めるために、サーキットパフォーマンスが高ければ良いのかというとそうではありません。一般ユースにもフォーカスして、乗り心地も追い求めていかなければいけません。この両方のベストバランスを取ることが、ルノー・スポールならではのもので、そこがプライドでもあるのです。

例えば、メガーヌRSでニュルのFF最速タイムを叩き出しました。一方、毎日使えるクルマにもしなくてはいけません。これはサスペンションセッティングに尽きるのです。もちろんエンジンもありますが。ただ、まずは良いサスペンションを開発しておけば、割とベストバランスを取るのが容易になります。

メガーヌRSの仕様書はとてもシンプルでした。メガーヌR26Rがニュルで8分17秒でしたので、それを上回ること。しかし、R26Rはカーボンボンネットや、ポリカーボネートグラスを採用し、2人乗りでした。しかし、メガーヌRSは5人乗りでウインドウはガラスなど素のままです。その状態で8分7秒を叩き出せたのは、エンジンと共にサスペンションセッティングが一番大きいかなと思っています。乗り心地は十分よく、日常でも十分使えるという中で、最速ラップを出せたのはサスペンションのバランスが取れているからなのです。

---:最速ラップを出すために、ドライバーはどういう心構えが必要ですか。

ウルゴン氏: R26R以来ルノーは6週間から7週間くらいニュルを自由にアクセスするプランニングを持っています。つまり、ルノー・スポールとしては、ニュルなしの開発は考えられない状況です。ここで、長い時間をかけてクルマを開発し、耐久性も見ています。

一方、このサーキットは22kmと長く、120もカーブがあります。このサーキットをなめてはいけないのです。繊細にドライビングしないといけません。先が見えないブライドコーナーが多く、エスケープゾーンが狭く、非常に危険な個所もあります。速度に乗るところから、低速になる場所もある。

タイムを叩き出すためには、長い経験を積んで、そのコース全てを覚なければいけません。本当にこのサーキットは難しいのです。

---:ウルゴンさんにとって理想のクルマは何ですか。

ウルゴン氏:理想のクルマですか?メガーヌRSですね(笑)。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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