下の★の付け方はむずかしい。なにがどうしたって、レンジが好きな人にしてみれば、全項目において5つ星だろう。なのに、パッケージとオススメ度に2つ星しかつけられない庶民の自分が悲しい。
とにかく圧巻である。超豪華。巷では乗り降りのしやすさ重視のシート高が激増するなか、よじ登るように乗り込む異次元さがたまらない。ついでに言えば降りるときは、高さ感覚を見誤り、着地に失敗して足をくじきそうなるが、そんなことすら神々しく感じられる。さらに後部座席は、広いし、シートはしっとり座れる皮だし、オプションでエンターテイメントシステムなんか装着されているもんだから、小学生からこんな後部座席での移動に慣れたらどんなオトナに育つんだよと、ひがみ根性まで出るくらいだ。
その乗り心地たるや、バブル全盛のころによく使った言葉を久々に思い出してしまった。そう、「魔法の絨毯」である。砂漠や雪氷のついた路面をがんがんに走ることを想定して開発されたサスペンションからすれば、アスファルトの凹凸やつなぎめなんて、へでもない。まるでなにごともなかったかのように、するすると加速していく。いや、正確に言えば、衝撃のインフォメーションはしっかり伝わってくる。それでも、奥の奥の奥のほうでさらっとかわしていく感じだ。なんという安心感、すばらしい安定感。
5Lエンジンと8速ATの組み合わせも、怖いものなしである。これだけの車体を見事に加速させる。しかもしなやかに。かつ、適切に。庶民の自分があれこれ車評を述べるのが申し訳なくなるくらいだ。こうなってくると、できることなら、灼熱の砂漠から酷寒の地まで超長距離ドライブでもして、徹底的にその懐の深さにひたりたいものである。
■5つ星評価
パッケージング:★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/エッセイスト
女性誌や一般誌を中心に活動。イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に精力的に取材中するほか、最近はノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。JAF理事。チャイルドシート指導員。国土交通省 安全基準検討会検討員他、委員を兼任。