スズキが2月26日に行った新型軽自動車『スペーシア』の発表会で、「トップを狙わなければダメ」と危機感を強めていたのが鈴木修会長兼社長だ。
同社は軽自動車市場において、34年の長期にわたってシェアトップに君臨していた。それが2006年にダイハツ工業に抜かれ、以来2位の地位に甘んじている。もちろん、トップを狙う努力をしてきたのは言うまでもない。
鈴木会長も07年の記者会見で「5年後にはトップの座に返り咲きたい」と話していた。それから5年が過ぎたが、2位のまま。しかも、トップのダイハツとの差は広がってしまった。12年の数字を見ると、ダイハツが34.1%に対してスズキは29.6%。その差は4.5ポイントで、「大きく離されてしまった」と鈴木会長。
そのため、社内の一部では「2位でもいいのではないか」という空気が生まれている。鈴木会長にしてみれば、こうした空気が蔓延してしまうのが一番怖い。その結果、どうなってしまうか。それは、ビール業界をみれば一番よくわかるだろう。
2位に長い間位置していたサッポロビールが、「スーパードライ」の快進撃によってアサヒビールに抜かれ、その後は下降の一途。そしてサントリーにも抜かれ、4位に転落してしまった。
軽自動車業界でも同じようなことが起こらないという保証はない。事実、3位のホンダは「Nシリーズ」の快進撃によって、スズキとの差を大きく縮めている。ホンダの存在を無視できる状況ではない。
「今年は暦年も年度も、シェア30%を超していく。最低でもシェア30%を確保する」と鈴木会長は強調する。そして、シェアトップ奪還のために決意を新たにし、社内に檄を飛ばしていくそうだ。その第1弾とも言えるのが今回の『スペーシア』で、今後の売れ行きが注目されるのは間違いないだろう。