このクラスのアメリカ車ときくと、つい、燃費の数字を見てしまうのは、いいんだか悪いんだか。JC08で9.2km/リットル。これをどう感じるかはユーザー次第である。音楽だってボリューム上げれば楽しいけれど電力は消費するのだ。楽しいクルマに乗ってなにが悪い? と、このクルマを選ぶ方々におかれましては、ぜひ、そう言い切っていただきたい。
だって、楽しいのだ。ゆったりとしたサイズ感。独特きわまりないフェイスマスク。運転席に座れば、ホワイトハウスの応接室にあるソファかと思わせるような(座ったことないけれど)優雅な座り心地のシート。からだ全体を包み込んでくる、よきアメリカのイメージがそこに充満している。ちょっと大きく感じるハンドルも、いかにも! という感じ。
そして圧巻なのは、8速ATが実現させるV6エンジンの加速である。この大きなボディをものともしない前進ぶり。どこでギアチェンジしたのか、よくわからないなめらかさ。ちょっとした異次元空間を味わえる。
ゆるめのサスペンションも、なんともいい味わいを出している。ああ、アメリカ。直線番長の国、アメリカ。燃費とか、ボディ剛性とか、車庫入れがどうとか、そんなんどうだっていいじゃん。楽しいんだから。人生、一度きりなんだしさ。そうつぶやきながら鼻歌でも歌いたい気分である。
現実に、我が家の車庫を考えると、ちょっと手が出にくいことは確かだ。だけど、楽しいことだけを積み重ねていく生き方を選びたい人には、お勧めな一台である。
■5つ星評価
パッケージング:★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/エッセイスト
女性誌や一般誌を中心に活動。イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に精力的に取材中するほか、最近はノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。JAF理事。チャイルドシート指導員。国土交通省 安全基準検討会検討員他、委員を兼任。