(13)石炭炭鉱
アンバンの駅には車が待っていた。恐らくは車の方が何倍も速く着いたことだろう。あくまでも列車の経験を積むための乗車だった。アンバンの駅は木造の質素な駅ではなく、コンクリートの立派な建物だった。この辺には何かあるのだろうか。周囲は相変わらず、田園風景、理解に苦しむ。
車でビンダヤへ向かう。途中でTAMが「ちょっと寄りましょう」という。こういう時は素直に従う。必ず面白いことがあると経験から判断できる。しかし一見何もない草原を降りていく。牛飼いの少年と何か話した後、更に進む。一体何があるのか。
粗末な小屋が見えてきた。中に人はいなかった。更に行くと、ようやく人がいた。TAMが話し掛けると、首を振っている。どういうことだろうか。その女性に着いて近くへ行くと、地面が掘り返され、黒い物が出ていた。
「石炭です」とTAM。え、こんな平地で石炭が出るのか。しかし規模は実に小さいし、完全な手掘りだ。昔中国の河北省あたりで見た小規模炭坑と比べても、何とも小さい。しかも今は作業している様子もない。聞けば、最近は石炭価格が下がり、採算が合わないため、掘り出していない。男たちは北部の炭鉱へ出稼ぎに行ってしまい、残った者がこの地で見張り番をしているらしい。
それにしても、ミャンマーは資源宝庫だとは聞いていたが、こんな普通の場所でも掘れば石炭が出るとは。付近では水牛を使った伝統的な農業が展開されていた。ミャンマーの奥深さが感じられる光景だった。そういう意味ではミャンマーは楽園、かもしれない。