歴史上2位タイとなる気温32度の厳しい条件の下、第96回を迎えるINDY500の決勝レースは200周の熱戦が繰り広げられた。
しかし、その主役は予選を圧倒したシボレー・エンジン勢ではなかった。上位グリッドを独占したペンスキーとアンドレッティのマシンたちは中盤を迎えるころにはホンダ勢に飲み込まれたのだ。
高い気温が味方したのか?ホンダはスピードでも燃費でも完全にシボレーの上を行っていた。チップ・ガナッシのスコット・ディクソンとダリオ・フランキッティは盤石のワン・ツー体制を築きつつあった。
そこへ絡んで行けたただひとりのドライバーがやはりホンダの佐藤琢磨だった。琢磨は19位からのスタートで113周で3位にまで上がり、119周で待望のレース・リーダーとなった。日本人ドライバーがブリックヤードで初めてトップに立った瞬間だ。
琢磨はその後もトータル31周をリードし、レースの主役を演じることになる。だが、4位で迎えたラスト17周でのリスタートで大きく遅れた。トニー・カナーンのトリッキーなリスタートにはめられたのだ。7位まで後退した琢磨だったが、本人はまったく諦めてはいなかった。
再度フルコース・コーションからのラスト7周でのリスタートでは今度は琢磨がやり返した。3位にジャンプ・アップし、さらにディクソンまで交わした琢磨の前にはもうトップのフランキッティしかいなかった。
最終ラップのターン1でインに飛び込む琢磨。スペースを閉めるフランキッティ。コース・サイドのエプロンまで寄せられた琢磨はたまらずスピンを喫する。スカイ・ブルーのマシンは回転しながらアウトのウォールに激突し、勝負はついた。
瞬時にイエロー・ライトが灯り、フランキッティの3度目のインディ500制覇が決定した。2位はディクソンでホンダ・エンジンがワン・ツー・フィニッシュを飾った。
琢磨のリザルトは17位に終わった。「お前が本当のウィナーだ!」アメリカ人ファンからの声援も琢磨の耳には届いていたのか?チーム・オーナーのボビー・レイホールに慰められると琢磨は一瞬だが声を詰まらせた。
世界でもっとも歴史の古いの自動車レースのひとつ、INDY500で日本人が限りなく優勝に近付いた瞬間は多くの人が忘れないであろう。