予選前日の金曜日をインディでは昔から「ファスト・フライデー」と呼ぶ。各車が予選に向けてのセッティングに専念し、大幅なスピード・アップが図られるのが常だからだ。しかし、今年のファスト・フライデーほど速くなった年は記憶にない。
すべてはこの日から3日間のみ許されるターボの過給圧アップのなせる技だった。エンターテインメント性を追求した結果であろうか?予選での数字を大事にしたい主催者の思惑なのだろう。来週の決勝を戦うエンジンより10キロパスカルも高い過給圧ではスピードが違って当然だ。
この日のトップは前日まで総合トップだったマルコ・アンドレッティで変わりはないが、そのスピードは227.540マイル/h(1周平均)と前日までの223.676マイル/hより実に4マイル/h近くも上げたことになる。予想では40〜50馬力のアップに繋がるとのことだったが、その結果がこの4マイル/hというわけだ。
2位、3位はライアン・ブリスコーとエリオ・カストロネベスのペンスキー・コンビで、4位と6位にまたライアン・ハンターレイとジェームズ・ヒンチクリフのアンドレッティ・オート・スポートの二人だ。
彼らシボレー・エンジン・ユーザーの間に5番手で辛うじて割り込んだのがホンダ・エンジンのスコット・ディクソンだった。だが、このディクソンのスピードも終了直前にドラフティングを使って出した体裁だけのものというのがもっぱらの見方だ。
トップ4独占ばかりでなく、トップ8中7台、トップ12中実に10台がシボレー・エンジンという偏った結果となった。
オーバル・コースでの優位性を優先し、シングル・ターボを選択したホンダだったが、シボレーのツイン・ターボの前に苦境に立たされている。オーバルでのディスアドバンテージはロード・コースよりも大きいのかもしれない。特にこのブースト圧アップはその差を広げるだけでホンダにはまったく味方しなかった。
佐藤琢磨も当然のように伸び悩み、224.825マイル/hで17位にとどまった。前日までの220.856マイル/hからは伸ばしたものの、シボレー勢の伸びははるか上を行っていたのだ。
翌土曜日はポール・ポジションから22位までの決勝グリッドが決まる「ポール・デー」だ。ホンダ勢がそれまでにどれだけの対策を施せるのか?注目される。