三菱自動車は19日、タイの工場で本格生産を開始した小型の世界戦略車『ミラージュ』の生産ラインを報道陣に初めて公開した。
同社のタイ工場は、バンコク市内から南東へ高速道路を1時間30分ほど走ったラムチャバン工業団地にある。タイ唯一の貿易港と隣接し、周辺には部品メーカーが集結するなど、自動車の生産基地としても恵まれている。
総敷地面積は106万平方mで、既存の第1、第2工場では人気の高い多目的スポーツ車(SUV)『パジェロスポーツ』やピックアップの『トライトン』などを生産している。既存工場と隣り合わせの約24万5000平方mの広大な用地に、総工費約450億円を投入して、第3工場を新設、この3月末からミラージュの生産を開始した。
新工場内に一歩足を踏み入れて感じた印象は、天井の高さである。タイでは年間平均気温が30度を下回ることは少なく、工場内はまるでサウナ風呂のような汗だく状態。このため、既存の第1や第2工場と比べると天井を1.5倍高くすることで通風をよくするなど、適正な作業環境を確保するように工夫しているのが特徴だ。
第3工場の生産能力は年産15万台。現在の1時間当たり生産台数は8台程度だが、今後は段階的に引き上げて「日本をはじめ、世界各国での販売が本格化する11月頃には26.8台まで台数を増やす計画」(タイ三菱幹部)という。
また、タイで生産するミラージュはこの7月から日本の市場にも投入する計画だが、万全の品質管理体制を確保するための取り組みにも工夫を凝らしている。
たとえば、最終検査ラインでは、日本から派遣された検査員が現地検査員の指導・育成に努めるとともに、日本での陸揚げ後の検査に必要なデータのチェックシートを従来のペーパー方式から電子化に切り替える。ネット回線を通じてより正確な検査データを “共有化”することで、「日本と同等の品質を確保する」(益子修・三菱自動車社長)のが狙いのようだ。