【IAAE12】カーディーラーに危機感、アフター事業者の生きる道とは…第10回記念 オートアフターマーケットサミット

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第10回記念 オートアフターマーケットサミットのようす
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  • オートアフターマーケット活性化連合 住野公一代表
  • ロータス同友会 室谷眞一会長
  • BSサミット事業協同組合 磯部君男代表理事
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第10回国際オートアフターマーケットEXPO(IAAE)2012では、自動車アフターマーケット業界を代表する組織のトップが集まり、ディスカッションが行なわれた。

登壇したのは全日本ロータス同友会の室谷眞一会長、BSサミット事業協同組合の磯部君男代表理事、オートアフターマーケット活性化連合の住野公一代表だ。司会はIAAEの事務局などを務めるジェイシーレゾナンスの松永博司社長。

自動車のアフターサービス業界で可能性を持つ事業は

ディスカッションは自動車市場に関するいくつかの数字を確認しながら進んだ。数字を確認しながら把握すべきは、自動車のアフターサービス業界はどのような分野が可能性を持つのか、である。

松永氏(以下敬称略):新車販売台数を見ていきましょう。1990年に比べ2011年は54.13%の規模に縮小しています。2007年以降は保有台数も落ちてきている。

室谷氏(以下敬称略):ロータス同友会は三菱自動車、スズキと提携しています。腹を割って話をしますと、やはり不満はあります。メーカーと一緒になって顧客を開拓していきたいところですが、ディーラーでは、お客さまの囲いこみも強くなってきていると感じます。

松永:カー用品の販売は1996年比で2010年は52.15%とこちらも縮小しています。

住野氏(以下敬称略):これは由々しき事態ですが、以前からわかっていたことでもあります。オーディオ、ナビは単価が下がっています。台数は同じでも、売上は半分ということもありますし。取り付け料もとりにくくなっている。

松永:こうした市場と相対的に見ると、自動車整備は法定整備に支えられて底堅い。堅調な市場といえるのでは。1995年比で、2011年は85.28%の規模。認証取得工場の数が増えたという影響もありますが。マーケットをみると、新車、カー用品の減少は著しい。中古車、ガソリン販売店も減少しているということになります。約9万1000ともいわれている自動車整備事業者のうち、17%のディーラー系整備事業者が半分くらいの売上をあげていると試算されています。

室谷:ディーラー系整備事業者がしっかりお客さまを集めているということは、すなわち需要があるということですね。

松永:自動車整備事業者には、車体整備事業が伸びているという感覚はあるのでしょうか。

磯部氏(以下敬称略):確かにそういう流れはありますが、いままでの流れを考えてみると用品店、ガソリンスタンド、ユーザー車検はどんどん増えています。車検の延長が現実となったら業界は大変になると見ています。

カーディーラーに危機感、地域の事業者に危機感は?

松永:ホンダのリンクアップフリーというサービスでは、通信料が無料です。はじめは3年無料、指定の店舗で車検をすればさらに次の2年が無料…というサービスです。これは自動車メーカーの究極の囲い込みではないかと感じます。カー用品の販売はカーディーラーがもっとも多い。整備も、用品もディーラーということは、自動車整備の専業事業者は知恵を振り絞る必要があります。

住野:仕事が減っているのはチェーン化されていないところ。個人でやっているところではないでしょうか。大型店は減っていません。

松永:カーディーラーも大変で、店舗の数は減る、クルマの販売台数も減る。自動車整備もいろいろなところに流れる、ということで危機感がある。

住野:自動車メーカー系列の事業所がやり残したことをやるということでしょう。ライオンが食べ残したものをハイエナが食べるように。用品屋はハイエナです。自分はカー用品屋だ、などと自己規定した枠の中にはまってしまってはだめ。やったことが無い、といっているのではなくて、やったことのないことをやらないといけない。

松永:車検のフランチャイズチェーンでいうとオートバックスは日本で二番目に大きいということになりますでしょうか。オートバックスは全店でBP(軽補修)開始という取り組みが始まりました。これを自動車整備事業者に聞いてみると以外に知らなかったりします。

磯部:一般的にカー用品店の人たちがやるのは軽板金であれば可能だと思います。しかし、事故車の修理というと大変。カー用品店が十分な対応力を持って技術者を育てることが出来るのでしょうか。初期投資も大変です。

保険料率の変化で軽補修は保険外に

磯部:保険の料率が変化する中で、将来的には10万円以内くらいに収まる軽補修は、保険を使わなくなるのではないかと感じます。保険料を数年払い続けるよりは、10万円くらいの金額は保険で払わなくなるという。

室谷:オートバックスが参入したのは保険対象外の小傷マーケットですね。この4月からは保険に関しては等級の洗い直しが始まっています。保険業界そのものが損害に対する考え方を整理している。従来以上に整備設備、品質、技術は、高いものが求められるでしょう。

カーシェア、レンタカー…「モビリティサービス」に需要

松永:車検はどんどん参入者が増える。自己努力で伸ばすのは難しい。それでは厳しいばかりか、というとレンタカーやカーシェアリング市場を見てもらいたいです。何かしらできるところではないかと感じるわけです。例えばタイムズは、カーシェアリングで最大手。こちらがインポーターと組んでいる。極論ですが、駐車場でクルマが売れる、ということも起こりつつあるのです。中古車などを使用した格安のレンタカーなどもあります。

磯部:BSサミットでは独自ブランドのレンタカー事業を展開しています。

松永:モビリティサービスを展開するという視点でみると新しいことがみえてくるのではないでしょうか。いま、クルマは電器店でも売っているし、ジャパネットたかたでも販売している。通信販売でクルマが売れるという時代です。ディーラーがさぼっていたということではなく、告知の工夫、マーケティング、そういったものが新しく変化している。

室谷:業態変化というなかでどこまでの変化を取り込めるかということでしょう。垣根を超えて、アフターマーケット事業者が意思疎通を図りながら、需要を吸収していかないといけないのではないか。

アフターマーケットの「ノン・メーカー系」企業が生きるには

松永:つまり、専業の整備事業者はいわば「ノン・メーカー系」なのですね。ユーザーの潜在ニーズを顕在化してビジネスにしていくことが大事。メーカーのように顧客は囲い込めないのだから。ユーザーの動向が変化、市場が縮小していくと、用品、車検、車体という話ではなくて、ユーザーにモビリティという利便を提供しているのだというかたちで、少しもの差しを変える必要がありますね。

松永:たとえば新成人のカーライフ調査(ソニー損保)というところに興味深い数字があります。それは、1か月でクルマに書けられるのは1万円以内と回答している方が多いこと。つまり、1万円であればクルマにお金を掛けてもいいということです。このニーズに対応できるのはノン・メーカー系の事業者ではないでしょうか。いままでのもの差しを、新たなニーズに対応したもの差しに買えていかなければならないということでは。アフターマーケットに携わる私たちは、メーカーではないのだから。認可事業者として、法定需要に依存するだけではなく、地域に根ざし、ユーザーの需要を顕在化していくということが大切だと考えられます。

連携と品質

住野:本当は自分のところですべて出来ればいいのです。整備については人がなかなか育たない。ある程度早くやらないといけない。日頃、お客さまの来店頻度が高いカー用品店で、整備も含めてすべてやってくれるのはお客さまとっては便利です。これからはいろいろなところと提携し、ワンストップサービスを求めているお客さまにサービスを提供するしかないでしょう。品質というところでは、ハイエナよりはライオンのほうが力がある。お客さまは安心していただける。つまり、小さなところよりも大きな組織の方がクオリティは追求できる。品質は訓練と教育、そして高い目標を持つことで高まります。

室谷:品質と連携ということで言えば、組織もいろいろな方々と連携する時代になっています。勉強してきたものを社内で共有するのは難しかったりします。なので私どもでは、組織のDNAを変えるというような取り組みも進めています。クオリティを求めるお客さまが来店されることで、店舗のスタッフの成長につながるということもあります。教育、接客についてはカー用品店さまを参考にしたいし、技術面ではBSサミット加盟企業さまなどに教えを請うかたちが良いのではと考えます。組織間の連携については、大きな波を乗り越えていくひとつの対応策ではないかと。

磯部:車体整備事業というのは重要であると申し上げてきましたが、仮に事故を起こした場合、エアバッグが開かない、ということも現実にあります。民間車検場との連携をきちんとしていく必要がありますね。今まで以上にやっていく必要があるのは事故車に対しての検査です。修理した事故車に対して、検査がないのが実状で、これが本当にお客さまのためかということ。エアバッグ、ABSは車検に組み込むべきだと思い、国交省、経産省と交渉を続けているところです。近い将来、車検の延長は必ず出てくる。そのときに仕事量を減らさないためには、事故車の検査制度を確立することだと考えています。これらは新しい取り組みなので、最初のうちは、ユーザー、損保、車体整備事業者で、おのおのが負担し合ってはじめるということになりましょう。今まで以上に連携というのは深めていく必要があります。

松永:足元は厳しいというなかで、得意分野をもって連携していこうということが住野さん。新しいことをするには連携が必要と話すのが室谷さん。そして将来的に制度を改めるためにも大きな連携が必要ということで磯部さん。それぞれにお考えをお持ちです。

松永:そこでまず、私たちは具体的な連携として「リサイクルパーツ」に注目しました。特にリビルトパーツを使用するということです。これにつきましては、住野さん、室谷さん、磯部さんの3団体で、連携するということでここで正式に発表させていただきます。メーカーが作ったクルマを活用して、いかに価値あるモビリティサービスの提供につなげるか。日本の自動車市場の将来をアフターマーケット事業者が支えていくことになれば幸いです。

《土屋篤司》

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