【池原照雄の単眼複眼】悩んで1ドル=90円…富士重工中期計画

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新興市場の獲得と為替変動に強い体質めざす

富士重工業(スバル)が今年度から2015年度まで5か年の中期経営計画を始動させた。最終年度には世界販売90万台、連結営業利益1200億円と10年度実績比でいずれも4割程度の拡大を狙う。併せて今後10年内に100万台を超える販売の達成を掲げ、今回の中計はその基盤固めと位置付けた。

米国に次いで中国での生産にも乗り出し、新興市場の獲得と為替変動にも強い体質への転換を図る。ただ、中計期間中の想定レートは1ドル=90円、1ユーロ=120円と、足元より相当円安に見込んだ。現下の円高水準では日本での生産体制を見直さざるを得ず、悩んだうえでの想定レートとなった。

6月に就任した吉永泰之社長は、中計では「米国と中国を重点市場と定め、経営資源の集中的な投下によって大幅な販売増を図りたい」と強調する。最終年度の目標である90万台のうち、北米は38万台(うち米国35万台)、中国は18万台と、両地域で全体の6割強を確保する方針だ。

◆課題克服のカギは中国生産

10年度実績比で北米は7万台、中国は12万台の上乗せとなる。中国は今秋には合弁生産計画が決まる見通しであり、日本製の輸出から現地生産主体に転換する。吉永社長は、中国プロジェクトの成否が「生産能力の拡充および為替対応力の向上という課題克服のカギを握る」と指摘する。

世界最大となった市場での現地供給力は不可欠だし、業績への為替感応度の引き下げも急務となっているからだ。中国生産の実現によって現状では25%程度にとどまっている海外生産比率を4割程度に引き上げる方針でいる。

中計はこうした海外展開や増販策を結実させ、最終年度に営業利益1200億円(同利益率6%レベル)を確保するというシナリオだ。ただし、この間の想定レートは前述のように1ドル=90円としている。現下の円高が続くと、利益目標は揺らぐことになろう。

◆日本での生産と開発は分離させない

社長として中計の立案を進めた森郁夫会長に質すと「社内でも様々に議論した。しかし仮に1ドル=80円だと国内生産の位置付けなど、景色はガラッと変わる。中期的な為替変動を見通すのは困難であり、(足元の情勢だけで)日本での生産と開発を分離するようなことはできない」と、いきさつを語った。

もともと中計では海外生産比率を高める計画を織り込んでいるものの、現状の80円を割り込む水準が続くのであれば国内生産の見直しは必至。やがて日本での生産はスカスカになって、商品技術や生産技術の開発にも影響を与えるというわけだ。

森会長は「外部からの指摘もあるでしょうから、ある意味勇気のいる判断だった」という。確かに「円安前提の中計」と揶揄されても仕方ないレベルではある。もっとも、富士重工は前の中計(07~10年度の4か年)で、リーマンショックの大波や期間中に20円幅を超える円高に見舞われながら目標を概ね達成し、最終年度の純利益は503億円と過去最高を確保した。それだけに、多少の揶揄は甘受してでも結果で示そうという、決意と自信がにじみ出ている。

《池原照雄》

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