【池原照雄の単眼複眼】自工会、1枚岩でのサプライヤー支援に着手

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“オールジャパン”で部品メーカーの復興支援をおこなう(写真は操業を停止している日産追浜工場)
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被災事業所は533件にも

日本自動車工業会は、東日本大震災で被災した部品メーカーの復興支援に取り組むため「サプライヤー支援対策本部」を立ち上げた。空前の被災に自動車各社が系列の枠組みや取引実績の有無を越え、一丸となって支援体制を構築していく狙いであり、今週内には具体的な支援活動が動き始める。

部品産業の被災は、日本メーカーのみならず米GM(ゼネラルモーターズ)など海外メーカーの生産にも影響を及ぼしている。それだけに、前例のない“オールジャパン”の取り組みは、日本の産業界に世界が寄せる「信頼性」を維持し、さらに高めるための活動ともなる。

自工会によると、22日までに同対策本部に集約された東北および関東地域でのサプライヤーの被害状況は事業所ベースで533件にも及んでいる。自工会の会員メーカー各社が集めた情報から重複分などを精査したもので、自動車産業のすそ野の広さを改めて示す格好ともなった。

◆メーカー系列越えた支援体制を推進

533事業所については、サプライヤーが自力復興するため支援は必要ないもの、被害が甚大なため再建の見通しが立たないケース、さらに東京電力の福島第1・第2原子力発電所の避難や屋内待機地域内に立地するものも含まれているという。

同対策本部ではこのデータを原簿とし、今後も支援状況などを織り込みながら日々更新していく計画だ。復興活動については、会員メーカー各社の調達・購買担当者が協議しながら取り掛かりの順番や人員・物資の投入計画などを決めていく。

支援計画の立案に当たっては、業界ベースの部品発注が集中しており、完成車の生産再開でボトルネックとなる事業所を優先するなど、「調達・購買担当者の知見を結集して判断」(自工会幹部)を下している。

同対策本部の設置を各社に呼び掛けた自工会の志賀俊之会長は17日の記者会見で「支援活動では、各社の系列企業への相互参画などワク組みを越えて取り組みたい」と強調した。自工会では当面、10件近くの事業所が、そうした支援対象になると想定している。

◆“オールジャパン”の結束が試される

自工会会員メーカー各社の調達・購買担当者からすれば、一刻も早く自社の生産再開に寄与したいところだろう。だが、各社トップの指示もあってか、規律が保たれた取り組みが進められているという。サプライヤーの被害の広がりからすれば、“抜け駆け”を自粛するのは当然でもあろう。

また2007年7月の中越沖地震で被災したピストンリングメーカー、リケンの工場復興に自動車メーカー関係者が殺到したため、地域の復興にも支障を来したという教訓も生かすことにしている。

福島第1原発の事故に対する警戒は世界に広がっており、風評被害は食品にとどまらず工業製品にも広がる恐れがある。自工会は先週18日には、「安全性を示すための必要な措置を業界一体で講じる」との志賀会長のコメントを急きょ発表した。

このように業界が1枚岩に団結して立ち向かうべき課題は山積しており、サプライヤー支援はその団結ぶりが試される最初の1歩となる。

《池原照雄》

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