トヨタ自動車のグローバル戦略の中軸を担うコンパクトカー、新型『ヴィッツ』(12月22日発表)。欧州トヨタ車に搭載されていた新世代1.3リットル直4エンジン+アイドリングストップのパワーユニットに新たにCVTを組み合わせ、日産自動車の『マーチ』を超える10・15モード燃費26.5km/リットルを達成している。
新型ヴィッツのアイドリングストップシステム「スマートストップ」の開発に関わった田渕博明・制御システム開発部グループマネージャーは、「ユーザーの皆様の違和感をどれだけ打ち消せるかということにいちばんこだわりました」と語る。
今日、アイドリングストップはマツダ『アクセラ』や日産『マーチ』などに搭載され、低価格で燃費向上を図ることができるデバイスとして認知されつつある。が、過去を振り返ると、とくに発進・停止の頻度が高い日本ではアイドリングストップはユーザーから“違和感がある”と嫌われていた。
トヨタのアイドリングストップの歴史は古く、78年に小型車『スターレットバン』に初搭載してからすでに30年以上が経つ。ヴィッツも初代、2代目とアイドリングストップモデルをラインナップしてきたが、「ほとんど売れなかった」(トヨタ関係者)という。
「最近では、アイドリングストップに対するユーザーの見方は明らかに変わってきている。だからこそ、ユーザーの皆様を今がっかりさせるようなことは絶対にあってはならないんです。再スタートでもたついた感じを持たれないよう、ブレーキを踏む足の力の変化を読み取ってブレーキを放す直前からエンジンをかけるようチューニングしてあります。また、エンジンが停まった後、何らかの理由で再始動できなかったなどということが一度でもあったら安心して乗れません。そういうことがないよう、仕様面でも耐久性の面でも万全の対策を図りました」(田渕氏)
発表会場では新型スマートストップを体感できるショートコースがあり、試乗してみたが、確かに再スタートは非常にスムーズ。また電動パワステを使っていることから、停止時にステアリングを据え切り油圧保持のためにエンジンがかかったりすることはなく、シティライドでの燃費向上効果は結構期待できそうな雰囲気だった。
ただ「発進加速でもたつかないセッティング」のため、ブレーキの踏力変化の読み取りは結構敏感。筆者がドライブした時には停止してから足の力を緩めるとそこでエンジンがかかってしまうといったシーンが結構あった。動摩擦係数<静止摩擦係数だから、いったん停まったら軽く踏んでいればいいはず、といった考えは捨て、停止時に一定の力でブレーキを踏み続けるよう努めるなど、クルマに合わせてある程度ドライブスタイルを変えてやる必要もありそうだ。
新型ヴィッツのスマートストップモデルは、平日は1日2時間の通勤走行、土日にはお買い物ドライブに使われることを想定し、バッテリーを除けば少なくとも15年・20万kmは耐えられるように設計されているという。耐久性と操作フィーリングの両面でユーザーの高い満足度を狙ったスマートストップは、アイドリングストップブームを一段と加速させるか!?