日本ではディーゼル車に対するイメージが低いままでなかなかイメージアップが図れない状態だが、これはデキの良いディーゼル車がきちんと販売されていないことも理由だ。
そんな中で、メルセデス・ベンツが『Eクラス』や『Mクラス』で尿素SCRを使ったクリーンディーゼルを、また日産が『エクストレイル』にクリーンディーゼルを搭載している。そこに割って入ったのが『パジェロ』のクリーンディーゼルだ。パジェロもエクストレイルと同様、尿素による後処理なしでポスト新長期規制への対応を実現した。
三菱ふそうが新世代のクリーンディーゼルを開発したのでそれを使ったら良かったのではとも思うが、従来からの3.2リットルエンジンをクリーンディーゼルに仕立て上げたのは大したものである。
直列4気筒3.2リットルエンジンと電子制御5速ATとの組み合わせは、低速域でのトルク感がまず印象的。エクストレイルは排気量が2.0リットルなのでトルク感も物足りなさを感じるシーンがあったが、パジェロにはそれがない。5速ATは今どきのATとしては記号的には物足りなさもあるが、変速フィールに特に不満があるわけではない。
でも振動や騒音はそれなりのレベル。SUVだから許される程度の音振性能で、普通の乗用車だったら不満の声が出るだろう。メルセデス・ベンツが6気筒エンジンの有利さと入念な音振対策によってディーゼルを感じさせない仕上がりにしているのに比べるとかなりの差がある。
パジェロは今回の改良でブレーキオーバーライドを採用した。アクセルが踏まれている状態で2秒ほどブレーキがオーバーラップするとアクセルがキャンセルされる。これくらいだと左足ブレーキで走っても運転の邪魔をされるような違和感を感じなくてすむ。ほど良い効き具合だった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。