道路交通法により、チャイルドシート(以下、CRSと表記)の装着が義務化されたのは2000年4月。CRSメーカーのアップリカは法制化10年を記念したセミナーを開催したが、そこで明らかにされたのは「乳幼児の死傷者は減っていない」という現状だった。
国立保健医療学院・行動科学室の藤原武男室長は「乳幼児の死亡事故は義務化の以前より減少傾向にあるが、CRS使用時の死亡率は上昇傾向にある」と指摘する。その原因として考えられるのは「CRSを装着しているが、乳幼児をCRSに着座させていない」、「CRSに着座させているものの、誤装着をしたことでCRS本来の性能が発揮されていない」という二つのケースだという。
前者についてはアップリカがユーザーを対象として、今年6月に行ったアンケートからも明らかになっている。CRSを所有しながら、乳幼児をクルマに乗車させた際に「必ずCRSに着座させる」というユーザーは39.7%で、残る60.3%のユーザーは「毎回使うわけではない」と回答していた。
使わない理由として挙げられたのは「子供が泣く、嫌がる」が最も多く、次いで「同乗者が腕に抱くから」というものだった。子供の命を守るという大きな視点よりも、「現状をなんとかしたい」という小さな視点の方が優先されてしまうようだ。