ここで密着取材を行ったフィアット江戸川/アルファロメオ江戸川内のクラブ=AIOCの実例を基に、参戦に際した準備についてまとめてみたい。
流れから説明すると、普段はアルファロメオのホビーレースに参加しているAIOCのメンバーが、2010年のアイドラーズ12時間+9分間耐久レースに参戦しようと意を決したのが1年くらい前のことだったという。
クルマをどうするかという問題には、部品取り車にしてしまうには惜しい程度のアルファロメオ『145』が「フィアット江戸川/アルファロメオ江戸川」のストックヤードにちょうどあり、それを使うことにした。さらにAIOCメンバーのなかから145の部品取り車の提供を申し出る者もいたという。
「チームメンバーが協力しながら準備するのなら……、という前提でベース車両を無料で提供しました」と語るのは、同社社長の染谷氏だ。同氏は元々全日本ラリー選手権などに出場していたモータースポーツマンで、AIOCの活動に手厚いサポートを差し向ける理由の源流が伺い知れる。
アルファロメオ145は1994年から2004年まで生産された3ドアハッチバックだ。ちなみに染谷社長によると、アルファロメオ145や『155』に関してはすでに優良個体が非常に少なくなってきており、仮にアルファロメオでレースに参戦してみたいという人がいれば、無料で提供しても良い車両がストックヤードに置いてある場合も、ままあるらしい……。
参戦車両は145に決まった。レースに向けて最初にやるべき作業は、軽量化だ。ドライビングシート以外の座席はすべて撤去し、エアコンやオーディオなどの快適装備類もすべてレースカーには不要となる。カーペットを剝ぐとアンダーコートと呼ばれる防振吸音材がモノコックシャシーに塗布されているが、これもすべて撤去してしまう。
ボンネットやバンパーなども軽量素材に変更してしまえば、アルファロメオ145の場合だと1tを切る車体に仕上がるという。軽さこそサーキットにおける正義だと聞いたことがあるが、145のノーマルスペックが1240kgだから300kg程度の軽量化が進めば加速や燃費に好影響が出るのだろう。
あとは、足回りの強化(ショックアブソーバーなど)と、ブレーキ、タイヤのサーキット走行に備えた最低限の準備だ。エンジンは耐久レースであることを考えるとフルノーマルの方がむしろ好ましいらしく、資金がないのであれば効率は無視してノーマルマフラーでも良いという(近年は各サーキットでマフラーの音量規制が厳しいようだ)。
AIOCが準備していた145は走行10万kmを超えた個体だったらしいが、それが本当だとするとイメージとは正反対にアルファロメオは意外にもタフなクルマだと言えるだろう。