BtoB向けテレマティクスの真打ち、「G-BOOK BIZ」の可能性とは…神尾寿

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G-BOOK BIZ専用の車載器
  • G-BOOK BIZ専用の車載器
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テレマティクスの草分けにして、その代表的なサービスでもあるトヨタ自動車の「G-BOOK」が法人市場にも乗り出した。それが「G-BOOK BIZ」である。同サービスはトヨタとトヨタメディアサービスが開発し、全国のトヨタレンタリース店を通じて提供されるBtoBの法人向けテレマティクスだ。

これまで法人向けテレマティクスというと、いすゞ自動車の「みまもりくんオンラインサービス」など大型車向けのイメージが強かったが、運行台数の多さでは一般リース車両は見逃せない存在だ。G-BOOK BIZは、G-BOOKで培ったノウハウをもとにリース市場向けに提案された商品と言える。ここでは、G-BOOK BIZの概要と可能性について考えてみたい。


◆"現場のニーズ"が生んだトヨタ初の法人向けテレマティクス

まずはG-BOOK BIZの概要を見てみよう。

G-BOOK BIZは法人向けテレマティクスのひとつであり、専用の車載器をリース車両に取り付けることで利用する。主なサービスは、「運行管理」や「安全運転啓発」、「エコ運転啓発」、「セキュリティ」など。一般的なG-BOOKのようにカーナビ連携して様々な情報を出すのではなく、ドライバー向けには簡単な音によるインフォメーションを基本とし、運行管理者向けのレポート作成を主に行っている。なお、現在取り付け可能な対象車種は、『プロボックスバン』『サクシードバン』『カローラアクシオ』『カローラフィールダー』『ハイエースバン』『レジアスエースバン』『ヴィッツ』『プリウス』『プリウスEX』などだ。

「G-BOOK BIZ開発の背景には、『お客様および営業現場からの強いニーズ』があります。また(G-BOOKを開発する)e-TOYOTA部としても、従来の個人ドライバー向けG-BOOKのほかに法人向けの新たなサービスを作りたかった」(トヨタ自動車e-TOYOTA部システム開発室G-BOOK開発グループ長の清水丈範氏)

周知のとおりG-BOOKは、日本の個人向けテレマティクスの草分けであり、2010年1月末現在で約150万台の利用登録台数を持つ。G-BOOK BIZはこの開発ノウハウを生かしながら、新たに業務用車両向けにテレマティクスを作ったのだ。

「レンタリース事業という観点でも、(G-BOOK BIZ)テレマティクスはぜひとも欲しかった商品でした。トヨタレンタリースでは『TCM Support (Toyota Car Management Support)』というASPの運行管理ソリューションを提供していますが、リース車両についてより詳細なデータ活用をしたいというニーズは以前からありました。ITによる車両管理のメリットを重視するお客様が増えているのです」(トヨタ自動車レンタリース部営業推進室リースグループ長の石坂勝美氏)

トヨタのレンタリース店が保有するリース車両は約45万台、顧客数は約11万法人。その多くは保有台数100台以下の法人が大半だという。大手宅配便事業者のように業務に使用する車両が数千〜1万台以上ともなれば専用の運行管理ソリューションの開発となるが、100台未満で独自のシステム投資は難しい。そのため中規模でリース車両を使用する法人顧客には、安価かつ簡単に利用できるASP型の法人向けテレマティクスのニーズが根強くあるのだ。


◆“G-BOOK共用”で品質と低コスト化を両立

業務で使用するものだから、サービス品質は重要だ。しかし一方で、導入・維持コストも抑えなければならない。その点でトヨタのG-BOOK BIZは、すでに大規模に普及しているG-BOOKのインフラを活用することで、その両立を実現している。

「例えば、G-BOOK BIZのセキュリティ機能では、G-BOOKのG-Securityのコールセンターなどをサービスインフラを共有しています。これにより他社の法人向けテレマティクスにない車両盗難時の位置追跡と警備員の派遣まで実現しました。こういった盗難追跡サービスはインフラコストが大きいため、(警備保障会社の専用サービスを除けば)他社の法人向けテレマティクスでは実現していません。G-BOOKとの共用をしているからこそ実現できたサービスと言えますね。

他にも、G-BOOKとセンター設備を共有にすることでコストを抑えてサービス利用料を低く設定するなど、(G-BOOK共有の)メリットは大きい」(トヨタ自動車e-TOYOTA部テレマティクス企画室G-BOOK企画グループ長の松岡秀治氏)

専用車載器にも工夫がある。G-BOOKではKDDI製の通信モジュールを内蔵し、事故時の緊急通報にも対応した高機能型のDCMを採用しているが、G-BOOK BIZでは低コスト化を重視。同じKDDI製モジュールを採用するものの、機能が簡素化された専用タイプになっている。これによりカーナビとの綿密な連携やエアバッグ連動での緊急通報機能などは省かれてしまったが、一方で、「カーリース料にサービス利用料を含める形で、1台あたり月額およそ2500円程度*という低コストでG-BOOK BIZの提供が可能になった」(松岡氏)のだ。

*車載機価格を含めた60か月リース契約の場合。料金は各レンタリース店が他のサポートメニューと合わせ独自に設定

周知のとおり、法人で利用する業務用車両向けテレマティクスは運行管理が主な目的となるため、利用するクルマの一部だけの導入ではあまり意味がない。可能なかぎり多くのクルマで利用するのが、導入効果を上げる原則だ。この際に重要になるのがサービス利用料がどれだけ低く抑えられているかだが、G-BOOK BIZはこの「低コスト」ニーズに十分に応えられるものになっているのだ。


◆安全運転支援とエコ運転支援で生産性を向上

具体的なサービスも見てみよう。

前述のとおり、G-BOOK BIZの基本サービスは「運行管理支援」・「安全運転啓発」・「エコ運転啓発」・「セキュリティ」の4分野になるが、この中で日常的に利用される機能となるのが、運行支援管理と安全運転啓発だろう。

G-BOOK BIZでは導入車両ごとに「運転診断レポート」という日報の作成機能がある。ここにその日の走行履歴や移動距離はもちろん、エコ運転の度合いや安全運転を徹底したかといった項目が「評点」として表示されるのだ。この審査基準はかなり細かく、ダイヤグラム表示もされるため、運行管理者はドライバーの業務をしっかりとチェックすることができる。

「運転診断レポートは、G-BOOK BIZの管理者画面から簡単に呼び出すことができますので、管理者はPCとWebブラウザーがあればこれらの機能が利用できます。また、各評点の審査基準などは標準設定のほかに、管理者がカスタマイズすることも可能です」(前述の清水氏)

G-BOOK BIZを用いるとドライバーの運転が細かくチェックできるため、データに基づいてドライバーに安全運転やエコ運転の指導が可能になる。また正確な地図入りで日報が作成されるため、管理業務の省力化にも貢献するのだ。

また毎日の日報作成だけではなく、リアルタイムでG-BOOK BIZ搭載車両が「今どこにいるか」を検索することも可能だ。G-BOOK BIZでは同時に最大5台までの車両検索に対応しており、要望があれば台数を増やすことも検討中である。

もちろん、G-BOOK BIZのメリットは管理者向けのみではない。運転中のドライバーにもある。その中でも代表的なものが、安全運転啓発の急加速・急減速の警告機能だ。

これはその名のとおり、急な加速や急ブレーキを行うと車内にブザー音を鳴らして警告してくれる機能で、ブザーを鳴らさないようにすると自然と丁寧な運転になるように設定されている。交通事故の抑止につながり、さらにエコ運転にもつながる。特にプリウスなどハイブリッドカーではモーター走行と回生ブレーキを効率よく使うことにもなるので、安全だけでなく燃費向上にも貢献するのだ。


◆秋頃には既販車にも対応。リース市場でのシェア拡大を目指す

G-BOOK BIZは今年3月に始まったばかりのサービスであり、まだ「引き合いは多いが、意識の高い一部のお客様が導入しはじめている段階」(石坂氏)だ。現在のG-BOOK BIZはリース車両の導入時に新車同時装着をする必要があるため、各顧客企業の車両入れ替えタイミングにならないと、サービス利用ニーズがあっても導入できないという課題もある。

「(すでにリース中の)既販車への対応ができないと、G-BOOK BIZを使いたいというお客様のニーズに応えきれない。予想以上に多くのご要望があったため、本年の秋頃にはG-BOOK BIZの既販車対応を行う予定です」(松岡氏)

まだ始まったばかりのサービスということもあり、年内の契約車両目標などは特にないというが、「リース車両のテレマティクス需要は間違いなくあります。導入が容易になり、サービスの認知度が上がれば、この分野が伸びることは間違いない」(松岡氏)。
 
トヨタ以外を見渡しても、法人向けテレマティクスは着実に伸びている堅実な市場だ。コスト削減と運行管理以外に、環境・安全分野に対する企業ニーズも高まっている。G-BOOK BIZの登場で、リース車両向けのテレマティクス市場はさらに活性化しそうである。
《神尾寿》

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