フィアットのセルジオ・マルキオンネCEOは11日、イタリア南部ポミリアーノ・ダルコ工場の労働協定を巡り、関係する労働組合と協議を行なった。しかし、労働組合の一部が反対したことで、交渉は暗礁に乗り上げた。
ポミリアーノダルコ工場は、1970年代初頭、当時国営産業復興公社の管理下にあったアルファロメオがイタリア南部経済振興および雇用創出を目的に建設した。当初の生産車種は、アルファロメオ史上初の小型大衆車『アルファスッド』だった。現在はアルファロメオ『159』と『GT』の生産を担当している。従業員数は約5000名。
フィアットは、数年前からポミリアーノ・ダルコ工場閉鎖の可能性を示唆していた。だが、経済危機対策として雇用維持を重視したイタリア経済推進省の意向を受ける形で、今年3月、現在ポーランド工場で生産しているフィアット『パンダ』の新型をポミリアーノ・ダルコに移す可能性を示した。また、同工場に対して、7億ユーロの新規投資をすると発表した。
しかし、現行の「2交代制・週5日労働」から、経営側が示す「土曜夜も含む3交代制・週6日労働」に移行させる案に関して組合側との交渉が難航。5つの関連組合のうち1組合が反対を示したことで、交渉は棚上げとなった。
経営側は、このまま交渉が進まなければ、2011年後半から発売する新型パンダの生産を、従来どおりポーランドで行なうこともあり得るとしている。
多くのイタリア人の世論といえば、2003年発売の現行型パンダが発表された当初こそ、まだ経営危機の中にあったこともあり、ポーランド生産に対して本社所在地のトリノを中心に失望感が沸いた。
だが今日では、パンダやその姉妹車である『500』が東欧製であることを理由に敬遠するユーザーは極めて少ない。もはやイタリア系ブランドが国内製でなければならないという意識は薄らいでいる。
実際パンダは好調で、昨2009年に、前年比約5万2000台増の約29万9000台を生産し、『プント/グランデプント』に次ぐ生産台数を記録した。
いっぽうポミリアーノ・ダルコ工場では、従来生産していたアルファロメオ『147』の後継車であるジュリエッタの生産拠点が別のフィアット工場に移されたことで、主力車種の工場としての地位を失った。ちなみに、先に発売された『MiTo』も、ミラフィオーリ本社工場で生産されている。そのため従業員としては、新型パンダの生産は、いわば最後の頼みの綱だった。
その新型パンダの生産開始まで、あと1年。ポミリアーノ・ダルコ工場に関する問題は、新型車の好調な販売スタートに影響を与えかねないところまで発展している。