菅内閣の下で、前原国交相に示された一番目の仕事は「高速道路の無料化」だった。菅首相は国土交通省に7つの大きな仕事を指示し、その最初に高速道路無料化を上げた。このことは鳩山前内閣と同じだった。前原氏は8日深夜の就任会見で、その文書を読み上げた。
「一つ目が、高速道路を段階的に原則無料化し、地域の活性化、流通コストの引き下げを推進すること」
高速道路だけでなく、他の交通手段に配慮する新たな視点も加わった。
「地域住民の移動手段を確保し、環境問題に対応するため公共交通を含め総合交通体系の確立に取り組む」
新民主党政権は高速道路の無料化を柱にして、交通体系全体の改革に着手したということだ。
それにしても「高速道路の無料化」や「段階的な無料化」ではなく「段階的に原則無料化」という言い回しは、何を意味するのか。
「『原則』が入ったのは、私が繰り返し国会で原則と言っていたことを踏まえて(菅首相が)おっしゃっていただいたのだと思う」という前原流のジョークに笑いは起きなかった。
少し真顔になった前原氏が続けたのは「私が作り上げた言葉ではない。これは去年のマニフェストに原則無料化と書いてあるので使ったまでで、鳩山政権の申渡書には『原則』が抜けていたのが入ったに過ぎないと思っている」と、加えた。
高速道路の中でも「首都高速と阪神高速は、原則料金はいただきます。有料で続けさせていただきますということは申し上げてきたわけです」とは、前原氏が繰り返して話してきた。それが『原則無料化』の意味するところだ。
6月下旬には首都高速と阪神高速を除く全国高速道路の18%が無料開放される。こうした無料化社会実験を経て、徐々に解放していくことを『段階的に』と表現したのか。
前原氏は「少ない金額、少ない路線かもしれないが、社会実験を積み重ねながら、これ(無料化路線)を決めていきたい」と、話す。
これまで利用者が負担していた通行料を引き下げたり、無料にするということは、その分の減収が発生するということだ。財源を手当てしなければ、道路建設の債務返済が滞ることになる。
来年3月までの無料化社会実験の財源は1000億円。当初、国交省は概算段階では6000億円を要求したが、税収の落ち込みを考えると、予算は大幅に削減せざるを得なかった。
「段階的な原則無料化」という言葉は、原則無料化という着地点を微妙に後退させたかのように思える。