【プリウス プラグインHV 発表】バッテリーを減らさなければ

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プリウス プラグインHV
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トヨタ自動車の次世代エコカー、『プリウス プラグインハイブリッド』。バッテリーに蓄えた電力量5.2kWhでEV走行が可能な距離は、23.4km。国交省の審査値であるJC08モード燃費は57.0km/リットルと、圧倒的な数値を誇る。

そのバッテリーパックの容量は、ある意味意外なものであった。使用されているパナソニック製のリチウムイオン電池セルは、性能を大きく左右する電極材料にニッケル酸リチウムという材料が使われている。この材料は電気自動車で広く使われるマンガン酸リチウムよりエネルギー密度で有利とされるものだが、バッテリーパックの重量120kgに対して蓄えられる電力量が5.2kWhというのはいかにも少なく、謎である。セル重量同士での比較ではないが、三菱『i-MiEV』や日産『リーフ』などのEVのバッテリーパック重量はおおむね100kgあたり8kWhとなっている。

ハイブリッドカーの場合、少ないバッテリー量で高出力を得るために、バッテリーの能力を重量や体積あたりの蓄電能力を示すエネルギー密度だけでなく、同じ量でより強力な出力を発生させる出力密度により多く振り向ける必要がある。

トヨタはバッテリーの詳細なスペックについては明らかにしておらず、仕様についても最適化を考慮して策定したと述べるにとどまる。あくまで推測だが、プラグインハイブリッドも同様の制御が必要であるとすれば、何らかの技術革新がなければ、EV走行距離を短縮しても、バッテリー搭載量はそれに比例して削減できるとは限らないという事情があるのかもしれない。

プリウス・プラグインハイブリッドの価格はベース車である『プリウス S』の2倍以上の525万円。もちろんこれは次世代エコカー普及のための助成金や、海外でのEV普及プログラムに乗ることを当て込んで“吹っかけた”金額という側面もあり、「個人のお客様の選択肢に入る価格設定」の実現を目指すが、本格的なコスト低減のためには、バッテリー搭載量を減らすことは不可欠。

2011年末に発売予定の個人ユーザー向けモデルのバッテリーは三洋電機製となる可能性が濃厚だが、バッテリーの電極材料も、同社お得意の三元系(コバルト-マンガン-ニッケル酸リチウム)となるかもしれない。バッテリーの進化はまだ始まったばかり。今後の技術動向が注目されるところだ。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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