【トヨタF1撤退】まさか、のタイミング

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  • この日まで開催されていた東京モーターショーにもF1は展示されていたのだが

2009年のF1シーズン閉幕から3日後の11月4日、トヨタ自動車株式会社は、パナソニック・トヨタ・レーシングとして2002年より参戦してきたF1世界選手権シリーズから、今季限りで撤退することを決断、発表した。

トヨタは8シーズンを戦って未勝利(最高位2位)のまま、F1での活動に幕を引くこととなった。昨年末のホンダに続く日本の自動車メーカーのF1撤退という事態に、内外のモータースポーツ界が大きな衝撃を受けている。

シーズン中から噂は燻り続けていたものの、「まさか?」というタイミングであった。発表は同日夕刻、トヨタの東京本社・地下会議室。近接する東京ドームではプロ野球の日本シリーズが開催されており、街に熱気が立ち籠めるなか、トヨタの地下会議室にも多くの報道陣が詰めかけ、ドームとは異なる熱気が生まれていた。

筆者の記憶が確かなら、ここは14年前にトヨタがWRC(世界ラリー選手権)における規則違反問題についての会見を催した場所。今回もまた、慶事の報告ではなかった。定刻を迎えると、一斉にプレスリリースが配られ、豊田章男社長が山科忠チーム代表(トヨタの専務でもあり、チーム母体であるドイツのTMG社の会長)を伴って入場。

以下は豊田社長のコメント要旨:

「取締役会で議論し、F1活動の終了を決定いたしました。レーサーやスタッフのこれまでの働きに敬意を表わすとともに、彼らには大いに感謝しております。夢を分かち合うことができました。先日の日本GPを観戦し、彼らのチームワークの素晴らしさや、ファンのみなさんの熱狂にも感銘を受けました。私個人はモータースポーツを自動車文化のひとつとして応援したい、推進したいと考えてきた人間です。あらゆる手を尽くしてきましたが、やはり今の経済状況のなか、苦渋の決断をしなければなりませんでした。応援してくれたファンのみなさんのことを考えると、身につまされるものがありますが、ご理解賜りたいと思います」

トヨタは2002年から、フェラーリなどと同様にシャシー、エンジンともに自社製で戦う体制でF1に参戦を開始。初戦で6位入賞という船出だったが、以降は必ずしも思ったような成績を残せず、8シーズン、都合140レース(決勝不出場等も含めて)を戦って最高位2位。チームとしてのシリーズ順位(コンストラクターズランキング)の最高成績は、2005年の4位だった。

エンジンのみの供給などを続行することもなく、前年のホンダ同様、F1については完全撤退。ただし山科氏によれば、チーム母体であるTMGの売却はなく、今後も事業内容を転換しながら同社は存続するとのこと。また、F1以外のトヨタのモータースポーツ活動(米国NASCAR、日本SUPER GTなど)については基本的に継続の意向であることを、豊田社長が表明している。

2日前にはブリヂストンが2010年いっぱいでのF1タイヤ供給終了を表明したばかり。これで、2011年にはF1界から日本の“主要なハード”が消滅することとなった。ドライバーに関しても、現時点で2010年以降のシートを確保できている者はおらず、鈴鹿での日本GPについても、鈴鹿サイドは強い永続志向をもっているが、現段階で開催が確定しているは2011年まで。

ことによると約2年後、2011年末にはF1と日本とのリアルな繋がりが絶たれてしまう可能性さえ、ないとはいえない事態。関係者、ファンに与えた衝撃は大きい。

《遠藤俊幸》

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