昭和電工は、カーボンセパレーターの大幅なコストダウンを実現する技術を開発したと発表した。カーボンセパレーターは固体高分子形燃料電池(PEFC)の高出力化を可能とする。
カーボンセパレーターの製造工程や原料の大幅な見直しによる生産技術の確立により、低コスト化や軽量化にめどをつけると同時に、これまで試作したPEFCに比べて出力密度が約30%増加した。開発は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の支援により得られた。
PEFCは、水素と酸素の化学反応によって発電し、二酸化炭素の排出抑制や電池の小型化・軽量化に適していることから、自動車、携帯用、家庭用の燃料電池向けに実用化が期待されている。
PEFCは、発電源であるセルを直列に重ねた構造となっており、セルとセルを仕切るセパレーターは、表裏両面をそれぞれ流れる水素ガスと酸素ガスを完全に遮断してそれぞれのガスの流れを制御するとともに、発生した電気を効率良く伝える役割を担う。
同社は、より強い機械強度と高い導電性を付与するために、ホウ素を添加したカーボンを原料とする2枚のセパレーター板を特殊な接着性樹脂の使用により高精度で熱溶着させる技術を確立し、水素ガス通過面、酸素ガス通過面、化学反応の結果生じる発熱を抑えるための冷却水流路と一体化したカーボンセパレーターの開発に成功した。
2枚のセパレーター板を補助部品により接合する従来の技術によるセパレーターと比較すると、2枚のセパレーター板の間の冷却水流路をシールするためのパッキン工程を省略でき、セパレーター板同士の接触抵抗値を10分の1以下に低減でき、2枚のセパレーター板の一体化による相互補強効果によりその厚みを0.1mm程度まで薄肉化できるなどのメリットがある。
これらにより従来のPEFCと比べて出力を約30%向上できる。
同社は無機・金属・有機に亘る高い技術蓄積を最大限に活用し、PEFCの部材について、今後も研究開発、事業化の推進を図る。