【神尾寿のアンプラグド 特別編】TomTom参入でカーナビ市場に激震!? 新型 iPhone の衝撃

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6月8日(現地時間)、米国・サンフランシスコでAppleの開発者向けイベント Worldwide Developers Conference 2009(WWDC 2009)にて、新型iPhoneとなる『iPhone 3G S』と、最新のiPhone 3G / iPod Touch用OSである『iPhone OS 3.0』を発表した。

iPhone OS 3.0は6月17日にリリースされ、iPhone 3G Sは6月26日からの日本国内での販売が開始される。

新たなiPhone 3G Sでは動作速度が平均して2倍に高速化されたほか、メモリー容量が増加。カメラ機能の強化や電子コンパスの実装など多岐にわたる機能強化が行われた。また、従来機種でも利用可能なiPhone OS 3.0も進化が著しく、待望の「カット&ペースト」や「MMS」への対応、本体を横向きにしてキーボードが使える「Landscapeモード」、高度な検索機能の「Spotlight」、紛失したiPhoneを探したり、遠隔操作でデータを削除する「Find My iPhone」などさまざまな新機能が実装された。さらにDockコネクターやBluetoothの制御もアプリ側から可能になり、独自プロトコルの開発や利用が可能になっている。これにより外部機器と連携したアプリやサービスも作りやすくなった。

進化したiPhone 3Gの可能性はどこまで広がったのか。今回のアンプラグドは特別編として、WWDC開催中のサンフランシスコから、現地リポートをお届けする。

◆1年で急成長した「iPhone市場」

「One year later. Light-years ahead.」(1年後 数光年先)、WWDCのメインエントランスに掲げられた横断幕に、シンプルにそう記載されていた。iPhone 3Gの投入からわずか1年で、iPhoneの世界は数光年先にまで進化した。そういう意味だ。

この自信に満ちたフレーズは大言壮語ではない。実際、iPhoneのプラットフォームは急成長を遂げている。iPhoneおよびiPod touchの普及台数は、グローバルで約4000万台。AppStoreで流通するアプリは5万種類を超えており、ダウンロード総数は10億の大台を突破したという。さらに米国内のモバイル端末からのブラウザー接続において、iPhoneのシェアが65%に達していることが紹介された。これらの数字が物語るのは、iPhoneのユーザー数が急速に増えており、しかもアプリやネットサービスの利用率がとても高いという「事実」である。その普及速度や市場での影響力拡大の様子は、iPod黎明期を思い起こさせる勢いがある。

このiPhone市場の拡大を背景に、満を持して投入されるのが「iPhone OS 3.0」と新機種の「iPhone 3G S」である。

ここで少し補足しておくと、iPhone OS 3.0は既存のiPhone 3GやiPod Touchも利用できる“新バージョンのOS”だ。これによりiPhoneの最新機能の大半が利用可能になる。

一方のiPhone 3G Sは、昨年発売されたiPhone 3Gの機能強化版。OSは最初からiPhone OS 3.0が導入されている。末尾の「S」はスピードを意味し、動作速度や画面描画機能の大幅な強化が施されている。またカメラ機能は300万画素のオートフォーカス付きとなり、動画撮影に対応。電子コンパス機能も搭載した。通信機能は7.2Mbps HSDPAに対応し、3Dグラフィックスの描画性能を向上するOpen GL ESも搭載した。

iPhone 3G Sは多岐にわたる機能強化が施されているが、基本的なデザインや画面サイズなどは変更されていない。位置づけ的には、性能アップを施したビッグマイナーチェンジである。

◆iPhone OS 3.0向けにTomTomも参入

iPhone 3G Sは魅力的な製品であるが、今回のWWDCで最も重要なのは、従来機種と新機種ともに搭載する「iPhone OS 3.0」の方だ。ここでは100以上の新機能が搭載され、AppStoreで流通するアプリケーションやサービス向けに1000以上の機能が利用可能になった。

WWDCの基調講演では、iPhone OS 3.0向けに数多くの企業とアプリが紹介されたが、その中でも注目なのが、これまでiPhone向けコンテンツ/サービス市場を牽引してきた“ゲーム以外”のアプリだろう。iPhone OS 3.0向けでは、これら実用系サービスが多く登場しており、今後の発展と成長の可能性が感じられた。

その中でも筆者が注目したのが、オランダのPNDメーカーである「TomTom」のiPhone市場への本格参入だ。周知のとおり、TomTomは欧州を中心にPNDビジネスを展開する企業で、アメリカのGarminと並びカーナビの世界市場を席巻している。日本向けに製品を投入していないのでなじみが薄いかもしれないが、デジタル地図の世界的大手であるTeleAtlasを買収するなど、ナビゲーション分野での影響力はとても大きい。

このTomTomがWWDC基調講演の壇上にあがり、iPhone OS 3.0向け新アプリを紹介した。壇上ではごく短いデモンストレーションしか行われなかったが、iPhoneの画面サイズと地図をベースにしたカーナビゲーションの組み合わせは十分に実用的であり、PNDの代わりとして十分に通用しそうだ。

iPhone OS 3.0環境、特に最新機種となるiPhone 3G Sでは処理速度や画面描画性能が向上しているので、ミドルレンジのPNDよりも高性能なナビゲーションが可能になりそうだ。さらにTomTomでは専用の車載キットを発売する予定だ。これを使うと安全性が増すだけでなく、音声ガイダンスの出力や利用中の充電が可能になるという。ここまでくると、日本の携帯電話向けに展開している「助手席ナビ」ではなく、ドライバーが使う1台目のカーナビとして十分に通用しそうだ。アプリや車載キットの価格や、日本市場にも提供されるかについては明かされなかったが、その内容によってはカーナビ市場に大きなインパクトを与える可能性もありそうだ。

◆カーシェアリングもiPhoneで

もうひとつ筆者が注目したのがカーシェアリングサービスの「Zipcar」iPhoneサービスだ。Zipcarはサンフランシスコなどアメリカ西海岸を中心にカーシェアリングサービスを提供している企業であり、サンフランシスコではかなり普及している。市街を歩いていると「Zipcar」と車体に書かれたクルマをよく見かける。

このZipcarのiPhone向けサービスでは、リアルタイムで利用可能な車両の位置が確認できるほか、車両情報の確認(Zipcarでは『プリウス』や『ミニ』など複数の車両がラインアップされている)、利用予約などが、iPhoneの画面上で簡単に行える。さらに興味深いのは、予約したカーシェアリング車両の解錠処理も、iPhoneから行えるようになっていることだ。カーシェアリングサービスではクルマの動態管理のために車載通信機が搭載されており、それとiPhoneが連携しているようだ。

日本でもオリックス自動車の「プチレンタ」などカーシェアリングサービスが増えてきているが、それらのユーザーの認証と解錠にFeliCaカードが用いられている。それらと比較すると、「すべてiPhoneで」というZipcarの取り組みはとてもユニークである。

◆拡大するiPhone市場とどう向き合うか

昨年の日本発売時、「iPhoneフィーバー」とも言えるお祭り騒ぎとなったiPhone 3Gであるが、その後も着実に普及台数は増加し、周辺ビジネスは活性化している。グローバルで約4000万台、特に日米欧での持続的に成長し続けているのは注目に値するだろう。

一方で、自動車業界とAppleとの関係性を振り返れば、iPod時代に早期から多くの自動車メーカーやカーナビメーカーが「iPod対応」を果たし、デジタル音楽とカーオーディオ連携の時代を先取ったことは記憶に新しい。今回のiPhone OS 3.0では、DockコネクターやBluetooth関連の機能が強化され、外部機器との連係がしやすくなっているため、それらを使って“クルマとiPhoneを連携させる”サービスが登場してもおかしくない。iPhone市場が、今後もグローバル規模で成長していくことを鑑みれば、日本の自動車メーカーやカーナビメーカーは積極的にこの市場に参入し、「iPhone連携」の新サービスや新アプリを開発すべきだろう。

また、これまで日本の携帯電話向けに「ナビゲーションサービス」を作ってきた企業にとっても、iPhone OS 3.0は大きなチャンスだ。今回のバージョンアップでは月額課金や追加コンテンツ単位の課金も可能になり、iPhone 3G S向けならば高速な3D描画や電子コンパス機能も使える。これまで日本市場で培ったノウハウを用いれば、TomTomにも負けないiPhone向けサービスが投入できるはずだ。しかも、それは"日本の携帯電話市場"だけでなく、"グローバルなiPhone市場"に展開できる。

自動車業界にとっても、iPhone市場の動向は目の離せない分野になりそうだ。

《神尾寿》

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