3 | カッコはつくものの |
ラードラーはビアホールで多くの人が注文している。とくに午後、散歩途中の友達とちょっと喉を潤したい人の格好の飲み物だ。
視覚的にも、ビールと同じ色なので格好がつく。日本の居酒屋でウーロン茶を飲んでいるような後ろめたさはない。かくしてラードラーのおかげで、ボクもソーセージ食べたさに堂々とビアホールに入れるようになった。
しかし、度数が低いとはいってもアルコール飲料に変わりはない。とくに爽やかな味なので、気がつけばつい多めに飲んでしまっている。だから席から降りるときは要注意だ。平均身長に比例しているのだろう、ゲルマン圏のバーカウンターの椅子は、ラテン圏のものより妙に高いことが多い。思わず着地する足取りが怪しくなってフラっと来てしまい、先ほどまでのカッコよさが帳消しになる。
そのうえいっぱい飲めば、当然のことながら然るべき場所に行きたくなるものである。ところが男子用トイレの取り付け位置も、ゲルマン圏ではラテン圏よりも高めに付いていることが多々ある。危なげになった足で子供のように背伸びをしなくてはいけない。国を変えても、酒を飲むエリアに馴染めない自分が情けないかぎりだ。
注意:文中にも書いたとおり、ラードラーは、あくまでアルコール飲料。たとえ欧州でも飲酒後の運転は危険である。
喰いすぎ注意 |
筆者:大矢アキオ(Akio Lorenzo OYA)---コラムニスト。国立音楽大学卒。二玄社『SUPER CG』記者を経て、96年からシエナ在住。イタリアに対するユニークな視点と親しみやすい筆致に、老若男女犬猫問わずファンがいる。NHK『ラジオ深夜便』のレポーターをはじめ、ラジオ・テレビでも活躍中。主な著書に『カンティーナを巡る冒険旅行』、『幸せのイタリア料理!』(以上光人社)、『Hotするイタリア』(二玄社)、訳書に『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)がある。