厳しい冬の時代を象徴
「リーマンショック」で明けた今週だが、週末にはもうひとつの経営破たんがあった。日産自動車の地元資本系ディーラーである富山日産モーター(本社・富山市)、日産サティオ石川(金沢市)、日産プリンス石川販売(同)が12日に民事再生法の適用を地裁に申請したのだ。
新車販売の長期低迷による事実上の倒産となった。自動車メーカーの支援によってディーラーは倒産しないという「神話」は、すでに過去の話であり、この業界が厳しい冬の時代に入った象徴でもある。
3社は同じ資本系列であり、1960年代から続いたディーラーだ。当面、各社1店舗で、すでに受注した車両などに関する業務のみを行い、事業撤退する。
◆新車販売への影響は軽微だが
日産系のディーラーでは、2006年11月に日産サティオ熊本が特別清算手続きによる廃業を選択して以来の破たんとなった。日産は、今回の北陸3社のユーザーのアフターサービスなどに万全を尽くす方針。
日産は、国内流通が実質1チャンネル制で、ディーラー各社はすべての車種を扱うため、新車販売への影響は軽微と見ている。ただ、地域経済や雇用にも影響する経営破たんは、ブランドイメージの悪化要因にはなる。
1960年代のモータリゼーションとともに成長した自動車販売業界は、大型倒産が起こりにくい業種だった。自動車メーカーにとって販売網は、シェアを確保し、伸ばすための生命線だったからだ。
◆軟着陸への連携強化を
仮に今回のように地元資本系の経営内容が悪化すると、メーカーが資本参加することで倒産を回避し、販売網を維持してきた。最強のトヨタ販売網でも、そうしたケースは何度か起きている。
しかし、国内マーケットの成長展望が描けない現状では、販売ネットワークはむしろ集約による効率化が必要となっている。自社陣営内でもディーラー同士が過当競争に走るケースも少なくない。これではメーカーには明らかな重荷となる。
日本自動車販売協会連合会による今年度の「自動車ディーラー・ビジョン」は、2020年度の新車需要を07年度より約1割少ない475万台と想定した。改善策を講じないなら業界の9割程度が赤字に陥るという厳しい予測も示している。
「不倒神話」は終焉した。だが、メーカーとディーラーはマイナス成長時代への軟着陸に、一層連携を強めるべきだ。突然の破たんは業界全体のイメージも低下させる。