2007年度に続く大幅な改定
投資した設備の費用を一定の期間に経費として計上する「減価償却」制度が2008年度から大幅に改定された。
全産業を通じて償却制度の簡素化と大部分の設備での耐用年数短縮が実施されるが、自動車産業もその恩恵に浴する。個々の企業の償却には経営方針が反映されるのでばらつきが出そうだが、国際競争力を高めるひとつの環境整備となる。
減価償却制度は2007年度にも40年ぶりとされる大幅見直しが実施されている。企業の国際競争力強化や設備投資促進などの観点から実施されたものだ。07年度改定の柱は、償却範囲(価額)の拡大だった。
償却範囲は従来、取得価額の95%までしか認められなかったが、残存簿価が1円(備忘価額)になるまでできるようになった。実質的な「全額償却」で、しかも07年度から購入する設備だけでなく、既存設備にも適用された。
◆法人税の実質減税に
このため、自動車各社でも昨年度から、過年度分の設備について残存していた5%分を償却する動きが活発化した。費用が発生するので決算には減益要因となるのだが、逆の見方をすると実質的な法人税の減税にもなる。さらに設備更新のスピードアップにもつながるので、多くの企業は足元の減益要因にこだわらず断行した。
今回の08年度の改定では、設備ごとにばらつきのあった法定耐用年数(償却期間)が全面的に見直され、総じてその年数は短縮された。これも国際競争力の向上や設備更新スピードの実態を踏まえた措置だ。
従来、設備の法定耐用年数は全産業で390区分にわたり、それぞれ3年から25年の耐用年数となっていた。今年度からは一気に55区分への集約となり、同時に半数余りの設備区分で耐用年数が短縮されている。
◆自動車の設備は耐用年数9年に一本化
自動車産業が含まれる「輸送機器」では従来、設備によって15に細分化され、耐用年数は7年から13年の間に定められていたが、すべて9年に一本化された。新しい制度は07年度の改定の時と同様、既存設備についても適用される。
企業にとっては既存設備の償却のスピードアップなど、より戦略的な償却・投資が可能となる。同時に個々の企業の償却方針は、従来にも増して各社の体力を映し出すことにもなろう。
つまり、一般的に収益力の高いところは積極的な償却(経費計上)がしやすく、法人税は節約となってキャッシュフローの改善にもつなげられる。今月下旬から始まる決算発表では、各社がどのような償却方針を打ち出すかもひとつのポイントとなる。