三菱自動車クラッチ欠損事故 事故が起きたら役員は必ず過失犯か

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横浜地裁は16日、元三菱自動車役員4人を有罪とした。交通事故で自動車メーカートップの刑事責任を認めた初めての司法判断となった。

鈴木秀幸裁判長は量刑理由をこう述べている。「元社長は98年3月以前にヤミ改修していた不具合のリコールを部下に検討させておらず、残る3人はクラッチ系統の欠陥を熟知しながら元社長にリコールを進言する事なく放置しており、4人が結果回避責任を果たしていないのは明白」。

だが、被告4人の弁護人は、判決後の会見で強く反発している。中でも元社長・川添克彦被告の弁護人である金森仁氏は「こういう判決が出されるようでは、自動車メーカーの場合、人身事故が起きたら、企業トップは必ず刑事責任を取らなければならないということと同じ。極めて安直な判決」と語る。

判決が執行猶予付きの禁固刑であったことも、弁護団は「なぜこれで有罪なのか理解できない。執行猶予付きなど関係ない」と憤っている。

02年10月に山口県で起きた交通死亡事故は、何が原因だったのか。2000年にクレーム隠しが発覚した時、三菱自動車は運輸省(当時)からリコール届けの必要な不具合の届出を求められたにも関わらず、被告らがブランドイメージを守るためなどの動機から報告の対象を限定する方針(※選別基準)を決めたという。これがトップの業務上の過失に繋がる行為だった。

「不具合の選別方法が、対象期間を不当に限定した極めて不十分で、死傷事故の発生につながる恐れがある不具合がもれてしまうことを知っていたにもかかわらず、(元社長は)そのまま承認した」(判決理由)

だが、弁護人の主張はこうだ。「選別基準(の妥当性)については、この裁判で十分話し合われてきた。審議で明らかになったのは、選別の担当責任者が『自分は基準に依らないで適当に選び出してウソの報告をしていました』と、法廷で証言して自白していることだ。その証言はまったく無視して、クラッチの欠陥は報告すべき内容だったのに選別しなかったという。これは明らかに間違い」(金森弁護士)

届け出るべき不具合を報告しなかったことが死傷事故を招く。地裁判決では「不具合情報を隠せば死傷事故が起きるかもしれないと予測できれば充分だ」と、有罪を導いた。

《中島みなみ》

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