イタリアでこのほど、初の「欧州生産中国車」がラインオフし、12日から発売されることになった。『DR5』と名づけられたこの車は中国・奇瑞(チェリー)製SUV『ティゴ』をベースにしており、イタリア南部モリーゼ州のDRモーター・カンパニー社が最終組み立てを行なう。
DR社は昨年設立された会社。フィアット系各車を扱う地元メガディーラーを母体としている。今回のプロジェクトのために州の産業振興援助金を得て、専用組み立て工場を建設した。工場は、2交代制で年産1万2000台が可能という。すでに、11月中旬に1号車をラインオフした。なお、DRとは、創業会長であるマッシモ・ディ・リージオ氏の頭文字である。
『DR5』は前輪駆動のみ。エンジンは、奇瑞製1.6リットル4気筒ガソリンと、フィアット・パワートレイン製1.9リットル4気筒ディーゼルが用意される。変速機は5段マニュアル。
初の「欧州製中国車」であることと同時にイタリアで話題になっているのは、その販売方法だ。12月12日からイタリアのスーパーマーケット・チェーン『フィニペル』25店を通じて行われる。
価格は1万6000ユーロ台から2万ユーロ台になる見込みだ。イタリアで販売されている2駆SUVでは、スズキ『SX4』とほぼ同価格で、日産『キャッシュカイ』(日本名『デュアリス』)よりも相対的に割安である。
イタリアは、人口あたり自動車保有率が欧州一位。生活の足として、セカンドカーやサードカーには、ブランドにこだわらず低価格で堅牢な車を選択する家庭が多い。いまだにラーダ『ニーワ』(ニーバ)やUAZといったロシア製中古4駆の人気が衰えないのも、そうした背景がある。したがって中国車に対する抵抗感は、日本よりも格段に薄いと思われる。あとはイタリア企業におけるサービスと、車自体の信頼性であろう。