3 | 運転士と会話タイム |
約1時間半後、シエナ南部のモンテ・アミアータ駅に着いた一行は、バスに乗り換え、ワイナリーと名産の豚の放牧場、そして近くの修道院を巡った。2軒めのワイナリーで昼食ののち、再び列車に乗り込み、こんどはトッレニエリ−モンタルチーノという駅に停車する。
駅舎は1865年築のものだが、廃線にともない10年以上放置されてきた。それを今回のワイン列車開通に合わせ、「マムシの追い出しから始めて」(スタッフ談)ワインバーに改装した。隣接する引込線には、廃車となった客車を活用したワインショップも設営してある。
他の参加者がテイスティングを楽しんでいる間、ディーゼルカーを見ると、輪脇に先ほどの運転士アルベルトさんがいた。猛暑の中、帰路にクーラーを効かせておくべく、エンジンを切らないで番をしていたのだ。
アルベルトさんは「燃料タンク容量は800リットルで、燃費はリッター2km」と、エンジンからの騒音と熱波をものともせず、線路に降りてボクに車両解説してくれる。
そして日本でいう「クモハ」「モハ」「サハ」、車両形式・番号にまで話が及んだ。彼によると、イタリアでは「6683169」のように7桁の数字で表示される。上ひと桁が同じ数字同士なら連結可能。続く2桁が定員、4桁めが動力形式、残る3桁がその車両固有の製造番号という。ボクは鉄ちゃんではないが、なにか物知りになったような気がして、嬉しくなった。
やがてアルベルトさんの身の上話にまで及んだ。彼は、「本当は飛行機乗りになりたかったんだけど、なれなかった。そういってバスの運転も気がのらなかったから、鉄道の運転士になったんだよ」と言う。転勤を3回も繰り返しながら、30年間運転士を続けてきた。ボクに対する熱のこもった説明といい、まぎれもなく鉄道を愛するおじさんに違いない。